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生保が取り組み始めたオンラインセールスの課題
コロナ禍が、生命保険の営業スタイルを変えようとしていると伝えられた。先行したのは最大手の日本生命。6月から東京・大阪の13拠点でオンラインセールスを実験的に導入したという。
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「大手各社は4~5月、訪問営業を全国的に自粛した。2020年4~6月の新契約の保険料(年換算)は、日本生命が約64%減(単体)になるなど各社で大きく落ち込んだ。日本生命の7~8月の新契約は緩やかに回復しているものの、清水博社長は『(新型コロナは)人と会うことで成り立つ事業の本質に影響を与えている』と語る」(8月26日朝日新聞デジタル)と、オンラインセールスを導入しなくてはならない背景が記されている。
この報道に接した折り、俗に言う「背に腹は代えられない」というニュアンスを感じた。
と同時に、こんな思いを痛感した。私もこの間「ZOOM取材」を強いられた。米国:ZOOMの収益は爆発的に伸長し、株価も一時50%近い値上がりとなった。要するに、コロナ禍の享受である。だがいわばオンライン取材と言い換えられるZOOM取材に、私は違和感を覚えている。
長らく親しんできた取材法は「下調べ」をし「質問事項」を携え、相手先を訪ねる。が、一問一答の取材など99・999%ない。出されたお茶などを馳走になりながら、話は脇道にずれ込んでいく。この「脇道」話が、用意した質問の遣り取りだけでは得られない思わぬネタをもたらしてくれる。
ZOOM取材では、この脇道に入り込むのが容易ではない。一問一答だけが進んで従来の手法なら1時間の対面時間が、30分もあれば済んでしまう。この道の師匠に叩きこまれた「へぇ~、ほぉ~、はぁ~と唸らされるのが取材」を、踏襲できない。
生保のオンラインセールスに「いたし方なし」は覚える。だがPC対PC or タブレット端末同士での遣り取りを、「移動の時間も省け、訪れる顧客数が結果的に増えて効率的」という見方もあるが「違う」と考える。顧客宅に上がり込み「売りたい商品説明」をしながらも、よもやま話(脇道話)に花を咲かせるなかで「今度、(私の)妹の子供が高校生になるのよ。うちの娘が高校に入った時に●●保険に入ったわよね。今度紹介するから妹に会ってみてよ」といった情報などを仕入れることができる。
またそもそも、オンラインセールスの最大の問題点は「新規顧客」の開拓だといえる。どうやって対応するのか。いたし方ない、とは思うが課題も多い。ある意味で我々の「取材」と「生保セールス」には共通した部分が多い。オンラインセールスで、落ち込んだ保険料収入が回復基調を明確にするのか否かをとくと見定めたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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