関連記事
長いものには巻かれろ ウォーレン・バフェットの動静とゴールド、日本商社 後編
(c) 123rf[写真拡大]
次に市場を驚かせたのは、カナダの鉱山会社であるバリックゴールド社への投資だ。バリックゴールド社は、昨今のゴールド価格の上昇により株価を大きく伸ばしているが、ウォーレン・バフェットはバリュー投資家として著名であって、これまで商品としてのゴールドへの投資に懐疑的だったからだ。
【前回は】長いものには巻かれろ ウォーレン・バフェットの動静とゴールド、日本商社 前編
バリュー投資とは、企業の価値とってその株価が割高か、割安かを判断して投資する方法であり、確かにバリックゴールド社のように、企業の価値よりも市場のゴールド価格の影響を強く受ける企業への投資はバリュー投資家の考えとは相反する。また、ゴールドの価格が史上最高値の水準であるこの時期に、割安とは思えないバリックゴールド社の株価を購入したことにも疑問が残る。
商品としてのゴールドは金融市場で安全資産とされ、有事の際には株式の下落およびドル安とは反比例に価格を形成してきた。それではバフェットが、ゴールドが未だ割安で、今後の株式市場は危険であるという予測の元で行われたのかと判断するのは時期尚早だ。ゴールドの価格はさておき、単純にバリックゴールド社の企業価値を見極め、割安だと判断されたとみるべきだろう。
さて、先日のバフェットの動きとして、日本市場の参加者を色めき立たせたのが、日本の商社への株式投資であった。伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事の株式を5%超取得し、今後も買い進める可能性があるというのだ。
バフェットは、これまで日本の株式市場への投資について懐疑的だった。それは日本の成長性を見越して敬遠していたというよりは、市場に詳しくなく、自身が不透明なものには投資をしないという姿勢があったからだ。では、なぜ日本の商社に投資を決めたかといえば、現在の商社の存在を紐解けば納得できる。
そもそも商社とは、売り手と買い手をつなぐ仲介業者としての役割を担うものだったが、時流とともに事業投資を行う役割へとシフトしてきた。そして、現在の日本の商社が、エネルギー資源に関するビジネスへ注力していることが、バフェット率いるバークシャー社の御眼鏡に適ったというべきなのかもしれない。それは、先述した米ドミニオン・エナジーからの天然ガス輸送・貯蔵事業の買収にもつながるといえよう。
このように、航空株を売却したバフェットが、エネルギー資源関連銘柄株を買い漁っていることは非常に興味深い。今後のバフェットの動静と、エネルギー資源関連銘柄株には注目していくべきではなかろうか。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)
スポンサードリンク