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日産とホンダの経営統合 「まさか」ではないかもしれないワケ! (2-2)
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日産は7月28日、21年3月期の営業赤字が4700億円、最終赤字が6700億円になるという経営見通しを発表した。販売不振は現金収支に及び、4~6月期のフリーキャッシュフロー(純現金収支)は8157億円の赤字だ。今後も競合に勝ち抜くための必要な投資は避けられず、研究開発で5300億円、設備投資で4500億円のキャッシュが流出する。20年3月末のネットキャッシュが1兆円だったから、販売が低迷すれば食い潰すことにもなりかねない。
【前回は】日産とホンダの経営統合 「まさか」ではないかもしれないワケ! (2-1)
20年末の状況がさらに悪化していると見て危機感を抱いた政府関係者が、19年末の遣り取りをリークして言外に現状の打開を促したとしてもおかしくない。
報道したのが英フィナンシャル・タイムズ紙であるのも意味深だ。国内のマスコミにリークすると、マスコミ間の妬みややっかみを引き起こし、想定外の事態に発展する懸念があるから、日本でもフランスでもなく、相応の発信力が認められるイギリスの同社にリークしたところに配慮の跡が窺える。19年末時点では打診を受けた当事者とごく少数の関係者のみが知る事柄だったが、今回の報道によって日産とホンダの取締役全員に共通の認識を与えることになった。
日産とホンダの経営統合が難しいことは誰にでも分かる。だが、日産とルノーとのこじれた関係を見れば、再び海外の自動車メーカーを交渉対象に選択することは現実的でない。トヨタの独り勝ちのような日本国内で、トヨタと日産の経営統合には感情的云々以前に独占禁止法というバリアが立ちはだかるから、「日産の相手になるような自動車メーカーはホンダしかない」という判断は正しい。
見方を変えれば、電気自動車(EV)等の先端技術で先を行く日産と、F1への挑戦とホンダジェットという航空分野でも存在感を示すホンダは、相手のないものを補完し合える存在との見方も可能だ。ホンダに貧乏くじと感じさせないようなお土産を用意するという配慮も必要だろう。
「出来ない理由を探すのではなく、どうやったら出来るか」というのは、社長が社員のみに求める発想ではない。風土の違う企業の経営統合という、よりハードルが高い目標にこそ必要な発想だ。
今回は予定通り3者が揃って否定した。だが、「もしかしたら」という思いは両社の取締役に共通の認識となった。日産の今後の状況によっては同様の話がより具体的に語られる時期が来るかもしれない。そんな思いにさせられる報道だった。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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