不動産投資における高い入居率に潜む罠

2020年8月14日 17:31

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■高い入居率を出せるわけはある意味当然

 「当社は98%と高い入居率を誇っています」といったような、高い入居率を謳った宣伝文句を聞いたことはあるだろうか。

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 不動産投資において、収入源となる入居者からの家賃が最も重要であることは言うまでもない。入居率は高いことに越したことはないが、実をいうと、この数値を出せるのはある意味当然といえる。

 その背景には不動産会社の思惑があり、不動産投資を検討する際には十分に内容を理解しておく必要があるだろう。

■入居率の算出方法は決まっていない

 実は入居率の算出方法は明確に決められておらず、不動産会社によって入居率の定義は異なってくる。

 入居率は、入居戸数を総管理戸数で割り100倍すると算出されるが、この計算式には一種の「からくり」があると考えた方がよい。

 例えば、清掃や原状回復を行う期間はその部屋を入居戸数に含めない事例が見られる。こうすることで空室が元から存在しなかったかのように見せることが出来る。

 また、入居者がいても、その入居者が家賃を延滞しており、家賃が入ってこない場合もあるだろう。家賃が入らなければ空室とほぼ同義になるので、この場合も実際の入居率とは乖離が生じる。

 これ以外にも不動産会社によって様々な入居率の定義が存在する。高い入居率は不動産会社が「いかに良く見せるか」を追求した「努力の結晶」といっても過言ではない。

■築浅の物件は入居率が高く出やすい

 不動産投資業界は参入障壁が低い業界であるといわれている。特に区分マンションにおいては、毎年多くの業者が参入してきており、設立の浅い企業も多い。

 設立の浅い企業が取り扱う物件は、新築・築浅が多くなりやすいが、当然そのような物件は入居率が高くなる傾向にある。それは、日本人が築古よりも新築の物件を好むからだ。

 そのため、設立から時間が経過しても、高い入居率を実現出来ているかどうかが重要な指標になるだろう。

■家賃が免除されるフリーレント制度の裏側

 フリーレント制度とは、一定の期間は家賃がかからないというシステムで通常1~2か月が多い。

 当然家賃を払わなくてよい物件は入居が埋まりやすいという点が利点だ。しかし、高い入居率を実現するために、フリーレント制度を導入している事例もある。つまり、とりあえず入居者を入れておくことで、入居実績を作り出すことが出来るわけだ。

 しかし、フリーレントは家賃が入ってこないため、実態は空室とほぼ同義だと考えることも出来るのではないか。

■入居率は不動産業者に都合良く操作される

 不動産投資を検討する際に、入居率は不動産業者にとって都合良く操作されると常に考えておくべきだ。立地や管理会社のサポート内容、金融機関の融資条件なども考慮し、投資すべき物件かを見定めることが重要である。(記事:大掛翔太・記事一覧を見る

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