ヒト組織を切らずに子宮頸がん診断が可能に AIを活用 阪大などの研究

2020年7月26日 19:05

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子宮頸部の正常組織(左)と子宮頸がん(右)。組織を切らずにがん診断が可能に。(写真:日本医療研究開発機構の発表資料より)

子宮頸部の正常組織(左)と子宮頸がん(右)。組織を切らずにがん診断が可能に。(写真:日本医療研究開発機構の発表資料より)[写真拡大]

 日本医療研究開発機構は23日、ヒト組織を切らずに子宮頸部を可視化する方法を開発したと発表した。人工知能(AI)を活用することで子宮頸がんの診断も実現可能になったという。

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■病理診断が不可欠だったがん診断
 がんを診断するためには、病気が疑われる部位を切り取り、病理医が顕微鏡を使って診断することが不可欠だ。だがこうした病理診断の精度は、切り取られた部位の大きさに依存する。部位が小さいとがんの診断が困難になる一方、患者から部位を切りすぎると負担が大きくなり、最悪の場合合併症が生じることもあるという。

 子宮頸がんの場合、患者が妊婦であるケースもある。だが病理診断は妊婦へのリスクが高いという課題もあった。

■AIを併用してがん診断が可能に
 大阪大学、九州大学、ニコン、日本医療研究開発機構の研究者らから構成されるグループは、課題を克服するために新しいがん診断法を提唱した。「多光子励起顕微鏡」は近赤外線で生じる蛍光を組織の深部から検知可能で、生体イメージングに用いられている。

 研究グループは多光子励起顕微鏡により子宮頸部組織を3次元で観察できる方法を開発した。この方法により、組織を切り取ったり染色することなく、細胞の核や細胞周辺の線維が確認できるようになる。

 また本手法によって得られた画像をAIによって解析することで、子宮頸部の組織やがんの画像を定量的に分類できることも確認された。ホルマリンによる固定や染色などの工程を介さずにがん診断が可能になるため、従来よりも迅速に診断できるという。

 研究グループが開発した手法が応用されることで、従来よりも迅速かつ安全にがん組織診断が可能になる。今後は、専門医の少ない発展途上国などであっても、IoTにより遠隔地でもがん診断が可能になることが期待される。

 研究の詳細は、米癌学会雑誌Cancer Researchにて23日にオンライン掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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