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コマツのスマートファクトリー (8) 協力工場での加工88% 科学は「データの集め方」
■協力工場での加工88%
コマツによると部品加工の88%は、協力企業によって行われているとしている。メーカーは、ほとんど組み立てだけであるのが実体ではある。自動車産業においても「技術はサプライヤーから買えば良い」と言っているメーカーもあるようだが、ライン組み立てだけのメーカーでは、技術の大半をサプライヤーに依存しなければならない。
【前回は】コマツのスマートファクトリー (7) 平準化による固定費の削減 見える化が宝物
コマツは、主要な厚板溶接作業を社内で行っているようだ。これは自動車にはない作業であり、建設車両ではメーカー社内加工は当然のことだ。この工程は、自動車では4000tプレスなどによるボディ製作段階に相当し、スポット溶接工程を含めてライン作業によるメーカー社内工程だ。
私の会社の親会社も組み立て以外はほとんど部品工場に頼っており、製造技術、生産技術までも頼っていた。そのため私の会社で「トヨタかんばん方式」のようなシステムを構築し始めても、むしろ親会社が「ロット生産」から抜け出せず、足を引っ張られていたのが事実だ。
その点、コマツは新しい概念には敏感で、私の会社が取引先として評価を受けられる期待があった。親会社が技術を知らなければ、サプライヤーの技術も見抜けないのは当然のことだ。特に、「トヨタかんばん方式」などの管理技術は目に見えないことが多いため、先駆者としての苦労は製造業では「コスト」として示すしかない。
建設車両産業は、自動車産業よりも「下請け制度」が必要に感じられる。さもないとサプライチェーンを含めた生産体制を構築することが難しいと言える。汎用部品でもそれなりに独自製品は出来るものだが、コストダウン、サービス性、開発力を担保するには、下請けによる部品製作まで一貫した工程構築が望まれるのだ。
部品工場まで統合した、製品開発レベルからのサプライヤーの参画が重要となる。これは、自動車産業とは違った「重量物生産」によるところである。
■科学は「データの集め方」
デジタル技術、現代ではネット技術も取り入れた生産ネットワークが表面的には目立つのであろうが、デジタル化の目的は「工程改善」にあるのだ。製造技術が新規に開発されれば、工程が変わり工数が変わる。
そのため工程が旧態依然としていると、一部の工程で加工スピードが上がっても、工程を組み替えないとむしろ無駄を増やす結果になることさえある。【デジタル技術も「カイゼン」の1つの技法であって、目的にはなりえない】。これは、半世紀前のコマツに言いたかったところで、現在も名言だ。
現在もよく言われる「見える化も1つの技法」であり、“工程カイゼン”が伴わないと意味をなさない。「スマートファクトリー」においても現場の実態はよく分かるが、そこに工程カイゼンが伴わないと「技術者のおもちゃ」となって無意味だ。
ロボットも「使い方のカイゼン」が伴わないと意味をなさない。また、「データ収集」が出来ていなければ、何も判断は出来ない。科学は「データの集め方」から始まると言っても良い。
続きは:コマツのスマートファクトリー(9) ORでは95%は簡単な「四則計算」レベルで解決がつく(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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