ハローワークの中途入社組がダンボール大手の社長になった何故

2020年7月22日 12:02

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 石川県金沢市に本社を構えるダンボール製販のトップ企業:ダンボール・ワンの前身:能登紙器は、1978年の設立(現社名への変更は2011年)。

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 だが現社長の辻俊宏氏は創業者でも、創業者一族でもない。05年入社の中途採用組。

 辻氏は学生起業家。食品のEコマース企業(SSC)を興した。が、22歳で事業を売却。嘘か真か「中小零細企業でサラリーマン生活をしてみたかった」というのが、その理由。門を叩いたのは、ハローワーク。

 そこでたまたま、能登紙器の求人に出会った。職種は営業。だが辻氏の入社直後に、能登紙器はネット販売を開始している。営業スタイルを大転換させたのは、辻氏。ダンボール・梱包資材のネット通販サイト「ダンボールワン」を立ち上げた。

 入社早々の若造がそういとも簡単に、営業スタイルを180度転換することができるものなのか。「僕は営業として採用された。より有効な営業の在り方を提案・実現するのは当然」(辻氏)。

 下地が整い始めていたことも否めない。02年にそれまで受託生産が主だったダンボールを、人気サイズ10種類を規格品とし販売を開始。引っ越しセットや自社広告の入った割安ダンボールなど、既製品のダンボール・梱包資材の開発販売を開始。辻氏はこうした状況下で、Web上でオーダーメイドのオリジナルサイズダンボールの見積もり・注文が可能な自動見積もりシステムを導入。即日出荷に対応するシステムを完成させた。ネットショップ開設から5年で売上高は20倍以上に拡大した。

 が、あくまで私見だが、辻氏は「能登紙器」の曲がり角を実感していたのではないか。

 社歴11年目の16年に社長の座を創業一族から禅譲。17年にはMBOを実施、全株を取得している。「もともと35歳で独立するつもりだった」とする辻氏は「買収可能な企業を常に意識しM&Aの準備をしていた」。

 その過程で前オーナーがダンボール・ワンの売却の動きを執っていることを知った。いわば自らの手でネット通販を断行し大幅な売り上げ増を実現した企業。オーナーが売りたいというのなら、「買ってやろう」となった。手元には前記のSSC売却で得た資金が、手つかずに残っていた。

 ダンボール市場は約500億円。年率1-2%程度の増加。「『ネット通販の需要増=市場拡大』を説く向きもあるが伸び率は精々、うん%。今後はダンボール以外の商材を横展開していく」とするが具体的な流れには言及しない。

 ただ辻氏を知る業界関係者は「知恵者だから・・・」とし、こんな例を持ちだした。ダンボールや梱包資材の製造コストを、最大90%削減する枠組みを考案し実現した。メーカーをネットワーク化し、工場の加工機を共有する「シェアリングプラットフォーム」を構築。機械の空き時間(非稼働)を活用したコスト削減策だ。

 入口からして異例。辻氏、真に異例づくしの経営者である。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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