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異性にモテるための「ムダな進化」が競争抑制し生物多様性に貢献 京大らの研究
研究の概要(画像:京都大学報道発表資料より)[写真拡大]
京都大学、東北大学等からなる研究グループは13日、数理モデルを使った研究に基づき、性選択による無駄な「モテ形質」の進化が競争排除を緩め、生物多様性の維持に大きな役割を果たしているとする理論を発表した。研究グループでは、この理論は、なぜ競争に弱い種が生き残ることができ、生物多様性が維持されうるのか、生態学における長年の難問に1つの答えを与えるものだとしている。
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■競争排除とは?
似通った餌や生息地を持つ種同士の間には、競争原理が働く。その結果、競争に弱い種は競争に強い種によって駆逐されてしまう。これを競争排除という。
しかし現実には、競争に弱い種が競争に強い種に駆逐されてしまうことは少なく、地球上には多種多様な種が繁栄を極めている。では、なぜこのようなことが起こるのだろうか?これは60年以上にも及ぶ生態学上の難問だった。
研究グループは数理モデルを駆使してこの難問に挑んだ。
■性選択による無駄な「モテ形質」の進化が競争排除を緩め生物多様性を維持する
様々な種において、オスはメスにアピールするために巨大な角や鮮やかな色彩、模様、求愛ダンス等を進化させてきた。しかしこのような進化は、個体からみると生殖に有利になるものの、種全体からみると、その増殖率には貢献しない、いわば無駄な進化になる。
だが研究グループによると、このような性選択による無駄な「モテ形質」の進化こそが、競争排除を緩め生物多様性を維持するうえで重要な役割を果たすと考えられるという。
すなわち、競争に強い種の個体数が増えると、メスをめぐるオス間の競争が激しくなり、「モテ形質」が進化しやすくなる。その結果、その種の持つエネルギーが、繁殖、成長、他種との競争等ではなく、無駄な「モテ形質」の進化に投資されてしまい、個体数が増えにくくなってしまう。
逆に、競争に弱い種の個体数が減ると、メスをめぐるオス間の競争が弱まり、「モテ形質」が進化しにくくなる。その結果、その種の持つエネルギーが、無駄な「モテ形質」の進化に投資されず、繁殖、成長、他種との競争等に投資されることになり、個体数が増えやすくなる。
こうして、競争排除が緩められ、競争に弱い種でも生き残ることが可能になり、生物多様性が維持されるというわけだ。
研究グループによれば、同様のメカニズムは裏切り行動にもあてはまるという。裏切り行動とは、アリやハチ等の社会性昆虫等において、個体の利益にはなるが集団の利益にはならない行動をいう。
例えば、ある種のアリでは、一部の個体が集団のための労働を止め、自分の卵を産む行動に専念することがある。
研究グループによれば、この理論は、これまでの種間の競争を重視する考え方に対して、種の内部に存在する無駄が生物多様性を維持するうえで重要な役割を果たすという、新しい生態系観を提示するものであるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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