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アパホテルも「1日にしては成らず」
6月に開業した「新大阪 江坂駅前」。(画像: アパホテルズ&リゾーツの発表資料より)[写真拡大]
6月8日の財経新聞:企業・産業欄に、『ホテル業界にも、「転んでもただは起きない気概が必要」』という一文を投稿した。その中でアパホテル代表の元谷外志雄氏が「(新型コロナ禍の影響やオリンピック延期の影響で)ホテル業界が窮地に陥っている今は、M&Aによる出店拡大のチャンス」と言い切っている、と記した。
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アパグループの足元は、実際にどんな状況なのかを改めて調べてみたいと考えた。6月5日時点で1都2府1道43県に、205棟のアパホテルを運営している。私はアパホテルに宿泊したことはない。体験のある知人は「部屋には元谷芙美子社長の著作やホテル関連に通じた識者の本が山と積まれている。フロントの脇ではそれらが販売されていた。商売人気質を痛感させられるホテルだった」とした。
だがそんなアパホテルも、収益的には荒波に晒されている。例えば3月の稼働率は50%程度、RevPAR(収益率、客室稼働率×平均客室単価)は前年同月比で3分の1程度に落ち込んでいる。対して手立ては打った。
着目したのはテレワーク促進の流れ。「テレワーク応援 日帰りプラン」を3月25日から販売。好感触。4月2日からは「テレワーク応援 5日連続プラン」を販売、早々に延べ2万室の予約が入った。結果、5月末限定の販売予定を7月末まで延ばした。が、アパホテル自体が言及しているように、「テレワークの利用の他は、生活インフラを支える業務に従事してされている方などの宿泊は限定的だった」というのが現実だった。
またコロナウイルス禍の中で、「アパホテル、ここにあり」を訴求する施策にも前向きに取り組んだ。自治体からの要請を受け、コロナウイルス感染軽症者などの受け入れに応じた。「アパホテル&リゾート<横浜ベイタワー>」(2311室)や「アパホテル<さいたま新都心北>」(233室)である。そして現在も「スタッフの安全を図ることを前提に、今後も自治体から要請があれば受け入れる方針」としている。
落ち込みをなんとか凌ぎつつも、時代の要請に応じようという背景には先の知人ではないが「商売人気質」をベースに積み重ねてきた財務力が存在しているであろうことは容易に想像がつく。
つくづく思う。そうなるまでには幾多の場数を踏んできたからであろう、と。2019年1月20日の経営・ビジネス欄に『「地面師」の巧妙さを著者に聞いた』とする記事を掲載した。ノンフィクション作家:森功氏の「地面師」が今手元にあるが、第5章の見出しは『アパホテル「溜池駐車場」事件の怪』。中には、アパホテルが地面師の巧妙な手口で12億円を騙し取られた顛末が記されている。
実力派企業も「一日にしてはならず」ということであろう。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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