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ガンマ線伴わない奇怪な宇宙ニュートリノの起源は何か 米大学が新モデル提唱
ハッブル宇宙望遠鏡が観測した銀河「NGC 1068」。活動銀河核に存在する超大質量ブラックホールのコロナが宇宙ニュートリノと「失われた」ガンマ線の起源であると、新モデルは予言する。(c) NASA/JPL-Caltech[写真拡大]
物質の最小単位である素粒子の一種「ニュートリノ」。南極のアイスキューブ・ニュートリノ観測所が検出した宇宙ニュートリノには、ガンマ線が伴っていなかったことが研究者を悩ませているという。この原因は、宇宙ニュートリノの起源を超大質量ブラックホールが隠しているからだとする新説が、米ペンシルベニア州立大学の研究グループによって発表されている。
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■ビッグバン後の宇宙の進化を明かすニュートリノ
ニュートリノは、質量がゼロに近く、ほかの物質とほとんど相互作用しない。地球にも飛来しており、岐阜県の神岡鉱山にあるカミオカンデや南極のアイスキューブ・ニュートリノ観測所等で検出されている。
ビッグバン後にニュートリノが宇宙に残した痕跡として、「宇宙ニュートリノ背景」が知られている。宇宙ニュートリノ背景は、宇宙に存在する加速機構によって生成されたと考えられ、候補としてブラックホールや中性子星等が挙げられている。
100電子ボルト以上の高エネルギー宇宙ニュートリノは、ガンマ線とともに生成されることが知られている。ところがアイスキューブ・ニュートリノ観測所が検出した100電子ボルト未満の宇宙ニュートリノには、存在するはずのガンマ線が伴っていなかったという。
■宇宙からの「メッセンジャー」を関連づける新学問
ペンシルベニア州立大学の研究グループは、失われたガンマ線の謎を新モデルによって説明しようとした。同大は、「マルチメッセンジャー天文学」と呼ばれるニュートリノやガンマ線、重力波や電磁波など宇宙からの「メッセンジャー」を関連づけて宇宙の進化を解明する学問の拠点でもある。
研究グループは、活動銀河核に存在するとされる、超大質量ブラックホールを想定した新モデルを提案した。このモデルでは、超大質量ブラックホール周辺のコロナが、100電子ボルト未満の宇宙ニュートリノの起源となりうることを示した。このコロナは極端に熱く、磁場を伴いかき乱された状態であるため、加速された粒子が崩壊し、ニュートリノとガンマ線が生成されるという。この環境は高濃度であるため、ガンマ線を遮断したのだと新モデルは説明する。
■日本人物理学者が研究を主導
研究グループが提唱した新モデルは、失われたガンマ線の原因を説明するだけではない。高エネルギーのガンマ線と宇宙ニュートリノはペアで生成されているが、軟ガンマ線に対応する電磁波も、新モデルは予言できるという。
今後は地中海に建設予定のニュートリノ望遠鏡KM3NeTにより、「超大質量ブラックホールから届けられる宇宙からのメッセンジャーをより深く探索できるだろう」と、研究を主導する同大学の村瀬孔大助教授は述べている。
研究の詳細は、Physical Review Lettersに6月30日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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