ソフトバンクGと孫会長の天国と地獄 (12) 「沈没船」から逃げ出したのは誰だ!

2020年5月28日 08:11

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 10兆円ファンド(約10.5兆円)の内訳は、サウジ・アブダビファンドの出資が約4.8兆円、ソフトバンクグループ(SBG)の出資が3.5兆円で、一般投資家の出資は2.2兆円である。

【前回は】ソフトバンクGと孫会長の天国と地獄 (11) 元本保証・7%確定利回り付きの「投資」?

 20年3月期の2兆円近いソフトバンク・ヴィジョン・ファンド(SVF)の損失を負担するのは、元本保証の付されたサウジ・アブダビファンドを除くSBGと一般投資家ということになる。出資比率で単純に案分すると、SBGが1.2兆円超、一般投資家が約0.8兆円を負担する計算だ。SVFにはキャッシュがないので、サウジ・アブダビファンドへの0.3兆円を超える利払い資金もSBGが被ることになるだろう。

 SVFで一般投資家と一括りにされて個性が見えないグループの内訳は、アップル、鴻海精密工業、クアルコム、シャープの4社計で50億ドルと、日本の金融機関などの合計で5億ドルとされている。いずれも世界に存在を知られた錚々たる顔ぶれであり、たとえ出資が減額されたとしても異論を唱えるようなセコいことはしないだろうが、サウジ・アブダビファンドとの隔絶した取引条件の違いをこれほど明確に見せつけられては、2度と同じテーブルに揃うことはないだろうし、固唾を飲んで見守る周囲のギャラリーから新たな投資家が出現することも考えにくい。

 10兆円というファンドの規模に圧倒されてしまうが、中身はスマホというムラ社会のやむに止まれぬ”付き合い出資”の一般投資家と、孫正義会長兼社長に翻弄される取引銀行と、元本保証・確定利回り7%という破格の条件だから応諾したサウジ・アブダビファンドに、自前の資金だけというこぢんまりとしたものだ。

 10兆円ファンドの過半に近い出資は、16年9月にサウジアラビアのムハンマド皇太子と赤坂の迎賓館で会談した際、孫会長がSVFの構想を熱く語った上で「今までは片手間で投資していたが、これからは本気でやる」と決意を示して、資金を引き出したとされる。「本気でやっても」思い通りにならないのが”投資”ということが良く分かる話だ。

 孫会長とは20年来に及ぶ盟友と知られ、SBGの社外取締役として存在感を示していたファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は「投資家ではなく、実業家として成功してもらいたい」と語っていたという。

 そんな盟友がSBGの社外取締役を退任したのに続いて、アリババ創業者で孫会長が「人生の友」と語るジャック・マー氏がSBGの取締役を退任した。カリスマレベルの2人の退任に共通した思いがあるかどうかは不明だが、「沈没船からいち早く逃げ出す〇〇〇」のたとえ話が頭に浮かぶのは、うがち過ぎだろうか?(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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