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米投資会社カーライル・グループの傘下で、臨床用検査機器や検査薬を商材とする米オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス(オーソ社)は、4月25日に新型コロナウイルス抗体検査薬2種類の緊急使用許可を、米食品医薬品局(FDA)から取得して米国での出荷を始めていたが、5月の下旬には日本国内で研究用の試薬として販売を開始する。
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オーソ社の抗体検査薬は、「2種類ともFDAの審査により100%の特異性で承認を受けた」という。新型コロナウイルスのPCR検査では偽陰性や偽陽性が付きまとい、診断結果の信憑性に一抹の不安が避け得ないが、オーソ社の抗体検査薬は「陰性のものを陰性と正しく判定する特異度が100%である」ため、新型コロナウイルスに対する抗体を持たない人を間違えて陽性と判定する偽陽性の心配がない。
但し、陽性のものが正しく陽性と判定される「感度」は、100%ではない。ウイルス感染後の特異抗体産生量(抗体価)の上昇には個人差があるためだ。
2種類の試薬は日本国内400カ所以上の医療機関に設置されているオーソ社の、全自動免疫検査機器「ビトロス」シリーズに最適化されている。静脈から採取した患者の血液を、遠心分離等の前処理後に専用試薬を混合して機器にセットすると、1時間で150人分の検査が可能だ。当面は疫学研究と臨床現場での使用が先行するが、将来は承認申請へ向かう期待もある。
アボットジャパンも5月中に、新型コロナウイルス抗体検査の研究用試薬の、製造販売の承認申請をすることが見込まれている。この抗体検査薬は全国の医療機関などで数千台設置されている同社の「免疫分析装置」とセットで使用される。
新型コロナウイルスに感染した患者の体内で、産生された「抗体」の有無が採血で検査可能だ。発症して14日を経過した患者を対象にした検証では、判定制度は100%だったようだ。1時間で100~200人分の測定ができる。
スイスの製薬大手であるロシュは、5月初旬に米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可を取得し、既に13日から医療機関や検査会社向けの研究用抗体検査薬の日本での販売を開始した。測定は国内に約1500台設置されているロシュの免疫分析装置を使い、測定には18分程度を要する。5月中に厚労省へ製造販売の承認申請を行い、保険の適用も目指す方針だ。
日本には国が承認した新型コロナウイルス向けの抗体検査薬はない。PCR検査を抑制して運用してきた日本にとって、感染第1波が峠を越えつつある時期に、国内の感染状況を具体的に把握する方法として抗体検査は欠かせない。感染しても無症状だったり、軽微な症状のまま回復している割合が相当高い、という見方もある新型コロナウイルスの感染状況を把握し、第2波へ向けた今後の対応を検討する上で、抗体検査の持つ意味は大きい。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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