コラム【アナリスト夜話】正常化に向かう生活。止まらない財政悪化(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)

2020年5月13日 09:14

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記事提供元:フィスコ


*09:14JST コラム【アナリスト夜話】正常化に向かう生活。止まらない財政悪化(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)
ゴールデンウイークが終わり、生活は正常化に向かっています。中小企業や個人への給付金もようやく先週始まりました。

ところで、連休前の4月23日、日本が初めて国債を発行してからちょうど150年が経ちました。新型コロナのニュースに隠れて、報道は1件もありませんでしたが、日本の債券市場の記念日です。1870年(明治3年)に、新橋‐横浜間の鉄道建設のため、ロンドンで発行されたもので、発行額は100万ポンド(=488万円)で、今の価値にして100億円程度です。

それから国債残高は増加の一途を辿り、2019年度末では928兆円に上ります。このところ歳出削減が奏功してきましたが、新型コロナ対策で支出は再び大幅に増加しそうです。
もちろん、こういう時こそ政府の出番ですから、支援は早く進めていただきたいものです。ただ一方で、政府債務は、既にGDPに対し約238%と世界最高で、今回の支援で更に250%程度まで上昇する可能性もあります。社会は正常化しつつあっても、生活への影響は続き、財政支出拡大にはまだ収束点が見えない気がします。

日本は貯蓄が余っていることや、(最近はそうでもなくなってきましたが)国内投資家が日本の公債のほとんどを購入していることから、「今は」全く心配はないというのも事実です。しかし、今回の危機で法人も個人も、貯蓄の取り崩しが起こりそうですし、長期的には更に見通しにくい状況です。どこまでの債務なら本当に問題ないのかを先々まで見通せる人はいないでしょう。

150年前の日本の初国債の金利は9%と、トルコやアルゼンチンの6%よりはるかに高い水準でした。担保として、日本の全関税収入とこの資金で建設予定の鉄道の利益を担保に差し入れたのに、信頼の低さは補えませんでした(富田俊基「国債の歴史: 金利に凝縮された過去と未来」より)。150年も前のことではありますが、財政関連の数字だけをみると、現在の方が厳しいくらいです。

混乱期の今はまだその時期ではないかもしれませんが、時期をみて、政府の役割や返済能力の問題をもっと正面から議論すべきではと思います。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:5/11配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)《HH》

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