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出口戦略に遅れた八方塞がりの日銀に次の一手はあるか?
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2013年6月に始まったアベノミクスから早7年が経過しようとしているが、アメリカを始めとする各国が金融緩和からの出口戦略を進める中、日本は後れを取ったままコロナショックを迎えてしまった。
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日本の政策金利は既にマイナス金利となっており、購入を進めるETFの保有残高は2020年3月31日の時点で31兆1738億円にも及んでいる。これ以上の金融緩和が望めない状態だ。
アベノミクスによる低金利であえいでいるのは、地方銀行や保険会社を始めとする金融機関に他ならない。
地方銀行は貸出金利が下がり、預金金利との差である利ざやが縮んで、利益が削られる。苦境にあえいだスルガ銀行が不正融資に手を出すほど状況は深刻で、地方の地銀は合併無くして生き残れない状態である。
そして保険会社も、預かった保険料の運用について、安全性の高い国債などの債券を中心にしていたため、マイナス金利下では運用がうまくいかない。
そんな中、大手生命保険会社については、外国債券や株式など、国債以外のリスク資産に運用資金を配分したことで2019年には過去最高益を上げたが、今回のコロナショックによる、リスク資産への運用難と保険料支払いのダブルパンチは免れない状態になっている。
コロナショックの株価暴落を止めようと、ETF(上場投資信託)を買い続ける日本銀行も問題だ。なぜなら、ETFの購入は間接的に株価を購入しているのと同義であるため、中央銀行たる存在が市場の実質的な筆頭株主になる可能性があるからだ。
本来、株価は、その企業の価値を示すものだが、日本銀行のETF買いは業績に関わらず行われるため、結果として本来は淘汰されていくべき企業まで、カンフル剤を打って存続させることになる。
さらに、日本銀行が大量に保有したETFは、いずれかのタイミングで売却をすることになる。つまり、企業が成長し、株価が上がるべき場面においても、日銀が売りをぶつければ相殺されてしまう。こんな市場の歪みさえ形成されかねない。
金利の深堀も、ETFの買い増しもためらわれる日本銀行は今、打ち出せる対策が無く、コロナショックに対策を続ける各国の中央銀行に後れを取っているといえる。このような苦境の中で、日本銀行は次なる一手があるのかどうか、十分注目をしていきたい。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)
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