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明らかにされつつある小惑星ベンヌの詳細 NASAの研究
NASAの小惑星探査機オサイリス・レックスは、日本のJAXAのハヤブサ同様に小惑星からサンプルを採取し、地球に持ち帰るミッションを担い、2016年9月に打ち上げられたものである。
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このミッションは小惑星ベンヌを訪れ、2023年に地球にサンプルを持ち帰る計画で、現在も進行中である。ベンヌはアポロ群に属し、地球の近傍を周回している直径約560mの小惑星で、その公転周期も1.2年と地球のそれに近い。2018年12月31日にオサイリス・レックスはベンヌの周回軌道に入り、現在は表面に着陸して、様々な探査活動やサンプル収集活動を行っている。
ベンヌの形状は球体には程遠く、小惑星と呼ぶよりは宇宙空間を浮遊する大きな岩という表現のほうがふさわしい。もともとは火星と木星の軌道間のアステロイドベルトにあった小惑星が、他の小惑星との衝突を繰り返す中で、今のサイズの岩になったと考えられている。それが地球のそばにやってきた原因は、ヤルコフスキー効果によるものとされている。
ヤルコフスキー効果とは、小惑星が太陽光を吸収して熱を赤外線として再放出するのだが、その放出のされ方がいびつな形状に起因して不均一になるため、それに起因する回転モーメントが生じ、それが小惑星の軌道に影響を及ぼすものである。
NASAはこのミッションの中で、ベンヌに存在している大きな岩を標識として用いた精密なナビゲーションシステムを開発した。このようなシステムが必要となった理由は、ベンヌには大きな岩が多数存在し、探査機がサンプル収集のために地点を変えて何度も着陸する際、事故の危険性を回避するためである。
このナビゲーションシステムを頼りに、NASAではこれからもベントの狙った地点からサンプルを安全に採取していく予定だが、それを可能にしたのはナビゲーションシステムだけでなく、1ピクセル当たり5cmという驚異的な分解能によるベントの表面写真を合成できたことも寄与している。つまり、この精密なマップを見ながら、狙った地点からサンプルを採取し、地球に持ち帰ることが可能になったのだ。
このミッションで持ち帰ったサンプルは、ハヤブサ2がリュウグウから持ち帰ったサンプルといっしょに分け合い、互いの研究に役立ていく協定がすでにNASAとJAXAとの間で結ばれている。偶然ながら、リュウグウはベンヌとそっくりなそろばん玉のような形状をしている。したがって、この手の小惑星の形成メカニズムになにか共通点があるのかもしれない。今からこれらのミッションでのサンプルリターンが楽しみである。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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