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人工光合成に使われる光触媒「黒リン」を効率的に合成 大阪市立大など開発
赤リンからの黒リン合成と黒リン上での水素生成反応模式図(画像: 大阪市立大学報道発表資料より)[写真拡大]
大阪市立大学と堺化学工業は17日、人工光合成において光触媒として使われる黒リンを低コストで効率的に合成する方法を開発したと発表した。研究グループでは、人工光合成の実用化を大きく加速できるのではないかと期待している。
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■黒リンとは?
黒リンは、赤リンや白リン等と同じく、リンの同素体だ。ちなみに同素体とは、同じ元素でできているが、構造等が異なるものをいう。例えば、酸素(O2)とオゾン(O3)は同素体になる。
黒リンは、太陽光線を効率的に吸収するために、人工光合成に使われる光触媒として期待されている。例えば大阪大学では2017年、黒リン、金ナノ粒子、チタン酸ランタンを使い、太陽光線を当てると効率的に水を分解し、水素と酸素を発生させる光触媒の開発に世界で初めて成功している。なお、太陽光線を使い、水を水素と酸素に分解する過程は明反応と呼ばれ、光合成における重要な一過程となる。
ただ、このような黒リンは合成が難しく、産業的な大量生産には至っていない。
今回、研究グループが開発した方法は、黒リンを低コストで効率的に合成するもので、黒リンの産業的な大量生産に道をひらくものである。
■ソルボサーマル法を使い黒リンを低コストで効率的に合成
ソルボサーマル法とは、高温または高圧下で、溶媒を使い、物質を合成する方法をいう。
研究グループは、このソルボサーマル法を使い、安全・無害な赤リンから、ポリリンを経て、黒リンを合成することに成功した。なお、溶媒としてはエチレンジアミンが使用された。
研究グループによれば、その収率は約90%にもなるという。従来の方法では、収率はせいぜい10%程度だったことを考えると、まさに劇的な収率の向上と言えるだろう。
また黒リンは、グラフェンよりも電子材料として使い勝手がよく、研究グループによれば、この方法は光触媒分野のみならず、電子材料分野にも応用が期待できるという。
研究グループでは今後、黒リンの安定性の向上や表面積の拡大等をめざして研究を進めていきたい考えだ。
CO2を削減し、地球温暖化を防止するためには、水素等の新しいエネルギーの開発が欠かせない。これからの人工光合成に関する研究の進展に大いに注目したいところだ。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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