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島津製作所、コロナ対策など科学技術力強化で7期連続の増収増益を目指す
島津製作所は3月4日、「新型コロナウイルス遺伝子検出試薬キット」の開発に着手したと発表した。従来のPCR法による新型ウイルスの検出では、鼻、のどから検体を採取してRNAを抽出・精製する工程が必要だが、この試薬キットはRNA精製が不要なため、検査の省力化や迅速化に貢献できるという。月産数万検査分の供給体制の早期確立を目指していく。
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島津製作所は教育用理化学器械製造を目指して、1875年に島津源蔵により創業された。1877年の内国勧業博覧会で内務卿大久保利通から褒状を受け、国内初の有人気球の飛行に成功し、140年以上にわたり革新的な製品・サービスを創出してきた。
2019年3月期の売上高は3,912億円。事業別の構成比は企業の研究開発・品質管理に貢献する分析機器とモノづくりを製品検査、品質管理でサポートする計測機器が61.7%、医療システムなどを提供する医用機器が17.7%、高精度な装置や機器でモノづくり産業の発展に寄与する産業機器が11.6%、安全・快適な運行を実現する航空機器が7.0%、その他が2%を占める島津の動きを見ていこう。
■前期(2019年3月期)実績
前期売上高は3,912億円(前年比3.9%増)、営業利益は前年よりも17億円増の445億円(同4.0%増)で6期連続の増収増益となった。
営業利益増加の要因としては、北米、欧州、中国の受託分析向け質量分析システム、環境対策強化による中国向け観測計測機器の好調により計測で17億円、眞空熱処理炉と油圧機器の伸長で産業が4億円、全社調整その他で3億円の増益であった。一方、X線撮影システムが北米と国産優遇の中国で減少したことにより医用で4億円、前期防衛機器の一括納品の反動減で航空が4億円の減益であった。
■中期経営計画(2018年3月期~2020年3月期)による今期推進戦略
「人の健康」「安心・安全な社会」「産業の発展」の領域で、科学技術力による事業拡大と企業価値向上により、今期売上高3,950億円(同1.0%増)、営業利益450億円(同1.1%増)と7期連続の増収増益を目指して、次の戦略を推進する。
1. ヘルスケア、インフラ、マテリアル、環境/エネルギーを重点成長分野として、新製品開発、新事業開発へ優先投資。
2. IOT・AIを活用したサービス事業強化と試薬・消耗品ラインアップによるアフターマーケット事業の拡大、不採算事業の再建・見直しによる収益力強化。
3. 事業別の推進
・計測は売上高2,450億円、営業利益395億円(2020年3月期、以下同): 質量分析計、液体クロマトグラフは新製品開発によるラインアップ拡充とアフターマーケット事業の拡大。
・医用は売上高700億円、営業利益27億円: 専門医療機関と連携したアドバンストヘルスケア事業の拡大、治療機種を中心に製品ラインアップ拡充と海外事業、サービス事業拡大による収益改善。
・産業は売上高440億円、営業利益37億円: 磁気浮上型ターボ分子ポンプの充実で世界No.1シェアを目指し、サービス事業拡大。
・航空は売上高295億円、営業利益8億円: 民間、防衛事業の見直しによる安定的な黒字体質再構築。
・全社調整その他は売上高65億円、営業利益-17億円。
WHOがパンデミックを表明。米国では非常事態を宣言し、スーパーや薬局などでのドライブスルー検査など1カ月で500万件の検査を可能にすると発表した。国民の健康を第一に考えれば日本でも医療現場に密着した検査体制の確立が急務であり、島津製作所検査キットの活躍に期待したい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る)
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