あり得ない質量の巨大白色矮星 形成メカニズムが判明か 英大学の研究

2020年3月6日 20:31

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白色矮星同士が合併する想像図 (c) University of Warwick/Mark Garlick

白色矮星同士が合併する想像図 (c) University of Warwick/Mark Garlick[写真拡大]

 恒星の終末期の一形態である白色矮星。質量の平均は太陽の0.6倍程度だが、太陽の1.14倍の質量をもつ白色矮星が発見され、天文学者を悩ませている。英ウォーリック大学は2日、この巨大白色矮星が、2つの恒星が合体したことで誕生したことを突き止めたと、発表した。

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■恒星の終末期の姿である白色矮星

 恒星の生涯は質量によって異なる。太陽の4倍程度の質量である場合、超新星爆発を起こしたのち、中性子星やブラックホールへと変貌する。それ以下の質量の場合には、核融合を起こすための水素燃料を恒星が使い切ると膨張して赤色巨星となり、最終的には白色矮星へと収縮する。地球の直径ほどの大きさにもかかわらず、1立方センチメートル当たり1.4トンもの密度を白色矮星はもつ。

 白色矮星は、電子の縮退圧により、自身を重力に対抗して支えている。縮退圧には上限があり、白色矮星は太陽の約1.4倍の質量をもちえないという。だが地球から150光年彼方の「WDJ0551+4135」と名づけられた白色矮星は限界に近い質量をもつことが、欧州宇宙機関(ESA)のガイア望遠鏡によって判明した。

■謎の残る恒星合併

 ウォーリック大学の研究者らから構成されるグループは、ウィリアム・ハーシェル望遠鏡を使って、この白色矮星の大気成分を分析した。その結果、非常に高いレベルで炭素を大気中にもつことが明らかになった。通常水素やヘリウム等の軽元素から大気は構成されるため、非常に特異な事例だという。

 研究グループが謎を解くために注目したのが、白色矮星の年齢だ。恒星は銀河の周りを公転するが、古い恒星は若い恒星よりも速く動く。「WDJ0551+4135」の冷却状態と回転速度から考えると、見た目よりもずっと年齢が高いことがわかるという。

 研究グループが導き出したのは、2つの白色矮星が合体することで、巨大白色矮星が誕生したとする説だ。連星系をなす主星が膨張して伴星を取り込んだという。まずは主星が縮小するにつれ軌道が近づく。次に伴星が膨張して同様の現象が発生し、両者が合体したのだという。

 だが謎は残る。連星系の合併は通常質量の異なる恒星同士で発生するが、今回のケースは似た大きさの恒星が合体していることだ。白色矮星の質量の上限もあるため、「WDJ0551+4135」は白色矮星の質量がどの程度で生き残れるのかを証明するのに役立つという。

 今回の発見は、大質量の白色矮星の進化について、新たな問題を提起するという。研究グループは今後、恒星内部で生じる脈動を利用する星振学により、白色矮星の核の成分を分析するとしている。

 研究の詳細は、Nature Astronomyにて2日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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