東ソー、新型コロナの簡便診断技術開発へ 成長分野での事業拡大を目指す

2020年2月28日 08:26

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 東ソーは2月21日、TRC法を用いた新型コロナウイルス検査キットの開発に着手したと発表した。TRC法による検出試薬を用いて検査することで、新型コロナウイルスを簡便に、約50分以内に検出することを目指している。

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 これまで培ってきた技術、知見を生かして、各種研究機関、公的機関の協力を仰ぎながら早期の開発に取り組んでいく。

 東ソーは1935年、東洋曹達として山口県で設立された。1975年に山形県を地盤とする鐵興社と合併し、1987年に東ソーへ社名を変更した。

 1990年に新大協和石油化学、2014年に日本ポリウレタン工業と合併した。

 2019年3月期の売上高は8,615億円。事業別の構成比は、オレフィン、ポリマー、ポリエチレンなどの石油化学が21.8%、化学品、ウレタン、セメントなどのクロル・アルカリが39.2%、有機化成品、バイオサイエンス、高機能材料などの機能商品が22.9%、各種プラント工事、土木建築工事、水処理装置などのエンジニアリングが11.5%、その他が5.1%を占める東ソーの動きを見ていこう。

■前期(2019年3月期)実績と今期見通し
 前期売上高は8,615億円(前年比4.7%増)、営業利益は前年よりも248億円減の1057億円(同19.1%減)であった。

 営業利益減少の要因としては、ナフサなど原燃料価格の上昇により石油化学が91億円、ウレタン製品の海外での市況悪化などによりクロル・アルカリが206億円の減益。一方、自動車排ガス触媒などの好調により機能商品が14億円、半導体関連の大型プロジェクト受注と電子、一般産業のソリューションサービスの好調によりエンジニアリングが34億円の増益であった。

 今第3四半期累計(4-12月)売上高5,918億円(前年同期比8.4%減)、営業利益658億円(同17.3%減)の中、中国の景気減速による製品需要の減退などにより、今期売上高8,000億円(同7.1%減)、営業利益840億円(同20.6%減)を見込んでいる。

■中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)による推進戦略
 既存のコモディティ事業と新規スペシャリティ事業をバランス良く強化する両軸経営により、2022年3月期に売上高8,900億円(対前期比3.3%増)、営業利益1,100億円(同4.1%増)を目指して、次の戦略を推進する。

1. 既存の基礎素材を中心とするコモディティ事業の基盤強化と競争力・収益力の向上。

2. 新規・成長分野でスペシャリティ事業を育成・拡大。

3. 事業別の推進。
 ・石油化学は売上高1750億円、営業利益150億円(2022年3月期、以下同): クラッカー競争力強化、機能性ポリマーの差別化、拡販。

 ・クロル・アルカリは売上高3,190億円、営業利益410億円: 機能品拡販と固定費削減。

 ・機能商品は売上高2,390億円、営業利益430億円: 主力商品をスペシャリティ事業として差別化、拡販。

 ・エンジニアリングその他は売上高1,570億円、営業利益110億円: 水処理で大型プロジェクト推進とソリューションサービス拡大。

4. 総合物流倉庫新設、エチレン専用船の更新による物流インフラの強化、効率化。

5. オープンイノベーションなど外部技術を活用した研究開発により重点分野の新製品開発加速。
 ・ライフサイエンス分野: バイオ医薬品関連、計測、診断事業の新規製品開発。

 ・環境、エネルギー分野: モビリティ用複合材料、電池材料など独自製品、技術の開発。

 ・電子材料分野: 通信材料、半導体材料、ディスプレイ用材料など新規電子材料の創出。

 化学の革新を通じ社会へ貢献するという理念の下、コロナウイルスの簡便な診断技術の開発などで事業拡大を目指す東ソーの動きを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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