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温度差で発電するウェアラブルな電池 名大などが高性能化の条件を導出
導電性高分子の薄膜の模式図(左)と最適な発電性能をもつ分子状態(右)(写真:名古屋大学の発表資料より)[写真拡大]
名古屋大学は17日、「導電性高分子」と呼ばれる電気を流すプラスチックで、最適な熱電変換性能を導いたと発表した。人体を熱源としたウェアラブルな機器への電源供給が可能になる材料として、期待できるという。
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■発電可能なウェアラブル電池を実現する導電性高分子
導電性高分子は電気を流すことのできるプラスチックだ。導電性高分子の発見と発展に貢献したとして、2000年には白川英樹氏がノーベル化学賞を受賞している。携帯電話用の電池やコンデンサーなどに活用され、われわれの生活に浸透している。
導電性高分子は軽量かつ安価でフレキシブルな性質をもつ。人体への毒性の低さや薄膜の作製の容易さから、ヒトの体温と外気の温度との差で発電するウェアラブルな電池の開発が進められている。
高分子材料の多くは発電性能が低いため、性能向上が課題となっている。だが高分子材料に存在する構造の乱れが多数存在し、電気伝導を妨げるという。そのため最適な発電性能の条件が既存の理論から求められず、開発の障害となっていた。
■導電性高分子が金属に近い状態に
名古屋大学、北海道大学、産業技術総合研究所(産総研)の研究者から構成されるグループが注目したのが、高い構造秩序を示す高分子材料だ。高分子に正負の電荷を導入することで、材料の性質を精密に制御する方法を見出した。
「ペルチェ素子」と呼ばれる、電流で温度制御ができる半導体素子を用いて温度差を誘起することで、電気伝導率などの特性を同一材料で変え、観測できるシステムを実現。研究グループは同システムを用い、高分子の電子状態を金属の状態まで制御することに成功し、発電性能が最大なることを発見した。
研究グループは、本成果が高い発電性能をもつフレキシブルな材料や素子の開発につながるだろうと期待を寄せている。
研究の詳細は、米オンライン科学誌Science Advancesにて15日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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