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ソフトバンクGと孫正義会長の天国と地獄 (6) 第3四半期に純利益計上? スプリントの合併?
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ソフトバンクGの孫正義会長兼社長ほど、周囲の目に映る姿に変化の多い経営者は少ない。
【前回は】ソフトバンクGと孫正義会長の天国と地獄 (5) サウジ系ファンドは、再度SVFに出資するか?
19年5月に行った決算会見で、営業利益が対前年同期比81%増加して初めて2兆円を超える最高益を計上し、純利益も3期連続で1兆円を超えたと発表した。まさに得意の絶頂だったと言える。高揚した想いは20年3月期の純利益も1兆円を突破して4年連続となる、という見通しまで口にしていたことでも明らかだ。
そんな絶頂期は、半年後の11月に行われた19年4~9月期の連結決算会見で終止符を打った。営業利益が前年同期に計上した1兆4207億円の黒字から一転して、155億円の赤字に転落したからだ。第2四半期(7~9月)だけを比較すると、前年が7057億円の営業黒字だったのに対して7043億円の赤字を計上し、経営状況は絶好調から正反対の崖っぷちに反転した。まさに、天国と地獄である。
2月12日に発表した19年10~12月期の連結決算による純利益は550億円に止まり、前年同期比で92%の減少だった。前四半期(19年7~9月期)の純損益が7001億円の赤字だったことを考慮すると、改善して来たと言えなくもないが、時化(しけ)の海原で激しい波に翻弄されている、かのような不安感は否定できない。
多少の光明は11日にニューヨーク連邦地裁が、米携帯通信3位のTモバイルUSと同4位のスプリントの合併を認める判断を示したことだ。
ソフトバンクGは、スプリントの株式の84%を保有する親会社に相当するが、4兆円を超えるスプリントの有利子負債が重荷になっていた。合併が実現するとスプリントへの出資比率は約27%となり、子会社から外れ財務負担は大きく軽減する。
孫会長が”子会社の負債は親会社として弁済する義務がない”と発言していたのは、裏返すとスプリントの先行きに大きな不安を感じていたからだろう。
スプリントは合併問題に区切りをつける流れだが、合併問題が長引いたことにより次世代通信規格「5G」の投資判断が遅れ、競合対象のベライゾンとAT&Tから、大きく水をあけられるというハンディを抱えてしまった。
仮に合併が成就したとしても、プリペイド式携帯事業を衛星テレビのディッシュ・ネットワークに売却して通信網も開放することや、低い投資効率が明白な農村部でのネットワーク早期整備、値上げを3年間凍結するとした合併条件は重い。
さらに、合併に反対しているニューヨーク州の司法長官が判決に不満を示し、上訴を匂わせていることも気掛かりだ。合併差し止め訴訟に参加した13州の協議がどんな判断に傾くかは、30日の期限が到来するまでは懸念材料だ。その結論が出るまでは”ぬか喜び”に終わってしまう不安は拭えない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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