オリンパスの挑戦 (下)

2020年2月9日 07:33

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写真は、創業100年を機にリニューアルオープンした「オリンパスミュージアム」。(画像: オリンパスの発表資料より)

写真は、創業100年を機にリニューアルオープンした「オリンパスミュージアム」。(画像: オリンパスの発表資料より)[写真拡大]

 2019年のオリンパスの株価は、3月末の1対4分割を勘案すると1月4日初値:796円に対し11月7日に1766円まで買われた。2.2倍強。が、大納会の終値は1689円。IFIS目標平均株価は「妥当」がコンセンサスの1858円も、目標株価を設定したアナリスト15人中9人が「強気」。

【前回は】オリンパスの挑戦 (上)

 収益動向は今3月期の「0.8%の増収(8000億円)、218.2%の営業増益(900億円)」計画に対し、4-9月時点の実績は「売上高3891億8900万円、営業利益509億3700万円」と順調。2.2倍以上まで値上がりした株価は依然として勢いを示しているが、中立組のアナリストが多いのも事実。

 何故か。起因は竹内康雄社長の「5カ年中計の最終期となる2023年3月期の(売上高)営業利益率20%目標」に求められると指摘される。今期の予想「営業利益率」は11.25%。3年間で倍近い水準に押し上げるというのだ。竹内氏が「目標」を公にしたのは以下のような背景からだと推測される。

 「医療機器の世界最大手:メドトロニック(アイルランド)の19年4月期の営業利益率は21%」。対して消化器系内視鏡で世界シェア7割を有するオリンパスの営業利益率は、10%前後での動向を余儀なくされている。

 より詳細に見ていくと、内視鏡事業は今期「総売上高比率約50%、部門別営業利益率25%水準」。加えて来期には消化器系内視鏡の新製品発売が予定されており、「営業利益率を5%ポイント以上押し上げる」と見られている。「総売上高営業利益率20%」実現のネックとされるのが、治療機器事業。

 内視鏡と組み合わせて患部(exポリープ)を切除する処置具や、外科用の電気メスの製販事業だ。今期予想で総売上高の3割を占めるが、営業利益率は14%水準見通し。治療機器事業は先のメドトロニックでいうと、低侵襲治療事業に該当する。同事業におけるメドトロニックの19年4月期の営業利益率は39%水準。この限りではオリンパスの「20%」目標のカギは、治療機器事業の採算改善策となる。

 だが世界の医療器具業界に通じたアナリストは「改善策は容易には整備できない。以上に注視すべきは、オリンパスの構造的な高コスト体質にメスを入れられるかどうかだろう」とし、具体的にこう示した。「18年度のメドトロニックの社員1人当たりの営業利益は約760万円。対してオリンパスの今期予想は320万円余り。半分以下だ」。

 果たしてオリンパスは、人件費を含む販管費という聖域の構造改革に手を入れることはできるのか。ちなみに日経新聞電子版は『竹内社長は「事業拡大だけで目標を達成するのは難しく、コスト削減は避けて通れない」と話す』としている。

 会社四季報:新春号は今期の営業利益を会社予想比5億円の独自増額(905億円)し、来期についても「920億円の営業利益」と続伸を予想している。

 オリンパスは、挑戦続きの時間と対峙している。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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