5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (25)

2020年2月4日 09:22

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 「コバヤシ、企画書の書き方を教えてくれ!」中学の同級生からこんなLINEが入りました。この場を借りて、文字数の許す限り、回答していきたいと思います。(N澤くん、読んでね)。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (24)

 あなたの書いた企画書は「売り物」になっているか?まずは、「戦略」が書かれた企画書だけが「売り物」になることを断言しておきます。それは「企み」とも言い換えられます。

 クライアントは企画案をあれこれ判断する前に、「あぁ… こうやって売っていけばいいのか」「こうすると、人がブランドに向かって動いてくれるのか」といった戦略の内容に注視してプレゼンを聴いています。当たり前ですよね。どんなにイケてる案でも戦略が無ければ、ふつうクライアントは買ってくれません。

 企画書に「人を動かす企み」が書かれていれば、クライアントと対等に話し合うことができます。また、最終的に具体案がNGをくらっても、「戦略は同意!案を修正して次回持って来て!」と次につながります。その場で企画案について、具体的な話し合いに発展することもあるでしょう。

 一方で、戦略よりも先に企画案を創出してしまう方もいます。その場合でも、ご自身のクリエイティビティーに浸ることなく、「Why So?(なぜ、そうなのか?)」と後ろから上流にさかのぼって、論理を必ず組み立てて下さい。アイデアは戦略(目的)に従わなければなりません。とにかく、ロジックを明確にしてからプレゼンに挑んで下さい(N澤くん、ここ、大事)。


■(27)動かす戦略と、ハネる回路で納得させて「企画価値」を上げる。


 クライアントと信頼関係が築けて、ちょっと自信がついたりすると、「この企画おもしろくないですか? 絶対ハネますよ~」と軽口を叩いてしまうことが少なからずあります。しかし、エグゼキューションの「ハネる回路」をしっかりとクライアントに説明できていれば無問題だと私は思っています。

 どんな人の行動を変えていく装置なのか? ターゲットを見据えた時、その人の気持ちに触るには何を利用すればいいのか? どうすれば説得できるのか? どう言えば共感を得られるのか? 今の社会をどのように変革していくつもりなのか?

 これらの目標を、作用のあり方を、企画説明(表現説明)の中に組み込んでいけば、「企画価値がある!」とクライアントは評価してくれると思います。とはいえ、企画書上での評価でしかありませんが。

 こうして、企画書でプレゼンの場をクリアできれば、あとは「実施」で成果を出すだけです(N澤くん、以上)。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。

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