国際帝石、石油・天然ガスの戦略的一貫生産で売上高1兆3000億円を目指す

2020年1月5日 20:54

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 原油・ガス開発生産の国内最大手である国際石油開発帝石(以下、国際帝石)は、国内石油元売り大手のJXTGホールディングスと、2020年前半にアラブ首長国連邦(UAE)に新設される同国産原油を取り扱う取引所に出資する。

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 取引対象の原油は、ホルムズ海峡の外洋にある港から出荷されるため、ホルムズ海峡におけるタンカー襲撃のリスクを避けることができる。

 1941年、石油資源開発を目的として半官半民で創業された帝国石油と、1966年に海外で石油資源を自主開発する目的で設立された国際石油開発が、2006年に経営統合して持株会社が設立され、2008年に現社名に変更された。

 主な株主は、経済産業大臣が18.9%の株式と買収に対して拒否権がある黄金株を持つ筆頭株主で、次いで原油・ガス開発を行う石油資源開発が7.3%を持つ。

 2019年3月期の売上高は9,713億円。構成比は原油が80.6%、LPGを含む天然ガスが17.6%、その他が1.6%を占めている。

 原油販売量1億50万3000bbl。地域別構成比は、日本0.8%、アジア・オセアニア5.6%、ユーラシア15.0%、中東・アフリカ77.7%、米州0.9%を占めている。世界で石油資源を開発し、殆どを海外へ販売している国際帝石の動きを見ていこう。

■前期(2019年3月期)実績と今期(2019年12月期)見込み

 前期売上高は9,713億円(前年比4.0%増)、営業利益は前年よりも1,169億円増の4,742億円(同32.7%増)であった。

 営業利益大幅増加の要因としては、販売単価が前期よりも上昇(油価57.9->70.9$/bbl)し1,391億円の増収、インドネシアのマハカム鉱区移管に伴う売上原価の低減847億円、販売費・一般管理費減少など74億円の増益要因。一方で、販売量の減少993億円、探鉱費103億円の増加、売上高の平均為替レートが57銭の円高による為替差損47億円の減益によるもの。

 12月決算への移行に伴い今期のみ9カ月決算となるため、前年実績は調整後前年実績を使う。今期は、油価63.5$/bblの前提で売上高9,840億円(前年比23.0%増)、営業利益4,760億円(同15.1%増)を見込んでいる。

■中期経営計画(2019年3月期~2022年12月期)による推進戦略

 油価60.0$/bbl 前提で2022年12月期売上高1兆3,000億円(対前期比33.8%増)を目指して、次の戦略を推進する。

●1. 国際大手石油会社10位台前半を目指し、石油・天然ガス上流事業の持続的成長

 ・経済性を追求した探鉱: オーストラリア北西大陸棚、メキシコ湾、ノルウェー、UAEを優先。

 ・操業効率を追求した開発、生産: ネット生産日量45万バレル(2018年)-> 70万バレル(2022年)、生産コスト5.9ドル/バレル -> 5.0ドル/バレルを目標に、近隣既存施設を活用しプロジェクト価値の向上。

 ・戦略的資産買収、M&Aの実施: 既存コアエリアの拡充、新規エリア、事業への積極的展開、探鉱事業との相乗効果。

●2.グローバルガスバリューチェーンの構築

 ・国内: 天然ガス年間供給量30億立方メートル達成へ向けたマーケティング継続。

 ・海外: オーストラリアのイクシスLNGプロジェクト、インドネシアのアバディLNGプロジェクトの推進とアジアなど成長市場での天然ガス需要創出。

●3.再生可能エネルギー取り組みの強化

 ・地熱発電事業の推進: 秋田県子安地域、北海道阿女鱒岳地域、インドネシアのサルーラ。

 ・風力発電事業への積極的参入: 洋上風力を見据え、陸上風力の開発推進。


 長期的戦略でのリスク管理と効率的な事業運営により、日本と世界のエネルギー需要に応える国際帝石の動きを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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