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ソフトバンクGと孫正義会長の天国と地獄 (5) サウジ系ファンドは、再度SVFに出資するか?
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ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)が、世界中から集めた1号ファンドの10兆円は、大きく2つに分けられる。もっとも大きいのは、サウジの「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」とアブダビの「ムバダラ・インベストメント・カンパニー」という両政府系ファンドからの資金(以後サウジ系と表記)で、合計でSVFの1号ファンド全体の約6割を占める。残りの約4割はその他の一般投資資金(以後”一般”と表記)である。
【前回は】ソフトバンクGと孫正義会長の天国と地獄 (4)「見た目は山賊のような」再建請負人
伝えられているところによると、一般の出資に対しては、運用が成功した場合には計上された利益から「成功報酬」が支払われるが、運用が失敗した場合には投資額に応じた損失相当分が元本から控除される。運用が失敗して元本が減らされるようなことになると、投資家の中には資金を回収して撤収する先が出て来る懸念が生じる。
これに対して、サウジ系の出資に対しては成功報酬はもちろん、「元本保証」と「6%の確定利回り」という条件が設定されているようだ。破格の扱いと言って良いだろう。サウジ系の資金は政府の資金と同義的な意味合いを持つため、ロスの懸念がある投資はタブーだから、サウジ側にとっては最低限の出資条件なのだろう。
SVFにとっては投資規模を拡大したい思惑と、一般の投資を呼び込む話題作りを狙った苦肉の選択だったのかも知れない。
この縛りが”禁断の道”を選択させた要因である可能性は高い。ウィーワークで発生した損失を損切りで処理すると、SVF全体の規模が縮小する上に出資者の中に、投資元本が保証された上に6%の確定利回りを手にするグループと、投資元本が目減りするだけのグループが同時に発生する。
誕生して僅か2年のSVFで、このダブルスタンダードが軋轢もなく円満に許容されることは考えにくい。ファンドの瓦解まで進まなくとも歯抜けの懸念があれば、孫会長兼社長が危機感を感じるのは当然だ。
今の時代に、資産運用で「元本保証」と「6%の確定利回り」が謳われていたら、世界で行き場を失っている資金が”全員集合”してしまうくらいの好条件だ。そんな大風呂敷でさえ、孫氏の”目利き力”があれば可能かも知れないと感じさせる神通力がある。
ウィーワークとSBGにまつわる話題が広く世界を駆け巡っている中で、孫氏はSVFの2号ファンド組成に意欲を燃やしているという。サウジアラコムのIPOで同社の企業価値を2兆ドル(200兆円超)まで引き上げたサウジアラビアが、極東のファンドに6兆円を再度出資するモチベーションを持つかどうかだ。
2号ファンドに見せるサウジ系の反応が、SBGとSVFの今後を見通す分水嶺になる可能性がある。サウジ系が2号ファンドに参加しなければ、ボリュームの大きさに支えられていたSVFへの市場の信頼感は大きく低下する。サウジ系が孫氏を信認して2号ファンドに参加するかどうかが、大きなポイントになって来た。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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