ケインズ博士とは異なる「株式投資=美人投票」論

2019年11月23日 16:58

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「ECO i-Shirt(エコ アイシャツ)」(画像: はるやま商事の発表資料より)

「ECO i-Shirt(エコ アイシャツ)」(画像: はるやま商事の発表資料より)[写真拡大]

 「株式投資は美人投票」と説いたのは、近代経済学発展に幾多の功績を残したケインズ博士である。玄人の株式投資を「新聞投票で美人を選ぶ方法」に例えた表現で、いまなおこんな風に説明されている。「投票者(市場参加者)の多くが、容貌が美しいであろう(値上がりするであろう)と判断する写真(銘柄)を選ぶことが有効な投資方法である、という教え」。

 ケインズ博士の向こうを張ろうなどとは思わないが、私は最近「投票者は、経営姿勢を明確に示す銘柄(経営者)を選ぶことが肝要」と考えている。トップ自らがIRを率先して発信する企業に魅力を覚えるからである。

 はるやまホールディングス(はるやま)、紳士服業界で青山商事・AOKI・コナカに次ぐ第4位の企業。1974年に岡山で設立され、全国展開をしている。この間40年余の間にはカジュアルウェアや飲食業など「隣の土俵」「門外漢」の世界に足を踏み入れた時期もある。

 だがいまのはるやまの経営方針は『健康』の2文字にフォーカスした、本来の土俵の深耕・付加価値化に徹している。治山正史社長はその背景をこう語っている。

 「(2011年の)東日本大震災で私どもの東北の店舗40も被災した。が、それよりなにより甚大な人的被害を目の当たりにして、人生・生活で一番大事なのは命であり健康だと痛感した。我々もビジネスを通し最も大事なものを支援していきたいとつくづく思った」。

 有言実行。爾来、こんな開発商品を、店舗を世に送り出してきた。

★スラテクノスーツ: 大阪府立大学と共同研究。着用時のカロリー消費をサポートするスーツ。

★ストレス対策スーツ: 衣服圧を軽減し着用時のストレスを感じにくくするスーツ。

★制菌アイシャツ: 19年10月には小林製薬とコラボし詳細は後述するが、売れ筋のアイシャツで汗臭に考慮した「制菌アイシャツ」を開発。

★健康ステーション: 店舗の一角に設備。血圧や体脂肪等の測定が可能。サプリメントも用意。

 アナリストは「もともと、はるやまには“健康志向”の下地があった。販売枚数で累計450万枚を超えている、アイシャツに象徴的」とする。

 2008年の北京五輪に際しJOCからの「猛暑の北京で着用するので吸汗速乾に優れ、収縮性がありストレスがかからないもの。記者会見にも着用するのでピシッと決まる選手団の公式服を」という要望を叶えたのが入り口。その折に使用した糸を活かした「アイロンの手間が不要」のワイシャツである。

 そしてその進化系として19年4月に発売したのが「エコアイシャツ」。アイロン不要と同時に、ポイントはその生地。再生ポリエステル100%。課題のプラスチックを原材料としている。

 紳士服市場の環境は、周知の通り容易ではない。だがスマホで固定電話は隅っこに追いやられたように、脱従来のスーツ=新しいコンセプトのスーツには新たな市場性があると考える。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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