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ソフトバンクGが直面する試練! (2) 迫り来る、難問の連鎖にどう対処する?
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ソフトバンクグループ(SBG)の株価は7月下旬に浮上の兆しを見せた。稀代のカリスマとして投資家の畏敬の対象となっている、SBG総帥孫正義氏への信頼感が、再浮上を期待した信用買いへと駆り立てたようだ。
【前回は】ソフトバンクGが直面する試練! (1) ウィーワーク支援以外に方法はあったか?
その時点の信用取引における買いの勢いは、売り残を10倍する圧倒的な買い残になったことが象徴している。あっという間に舞台が暗転した現在、売ることが損失を意味するために、売るに売れない状況だ。
だがマーケットは待ってくれない。反対売買を迫られる6カ月後の決済期限が20年の1月にやって来る。無念の売り決済が膨らむと、株価の更なる値下がりが現実味を帯びる。
逆に、SBGの傘下にあるソフトバンク・ビジョン・ファンド(SBF)に深い因縁を持つサウジアラビアでは、延び延びになっていた国営石油会社サウジアラコムを12月、同国の証券取引所に上場する見込みになったと報じられている。11月中旬に売り出し価格を公表して、12月初旬に売り出しを開始することで調整されている。11月の初旬にはサウジアラコムがIPOに係わる計画を発表すると報道された10月29日、多少の値上がりを見せた株価も30日には半分ほど戻した。
SBGが昨年末に強気で行った通信子会社ソフトバンクのIPOはその後、公開価格を下回り投資家を落胆させた。8月になってようやく1500円の公開価格に復帰し多少の期待を抱かせたが、現在は1500円を中心にした振り子のような動きに終始している。
金利の低下が進む昨今の金融情勢のなかで、企業が資金を調達する方法の一つである社債の金利には、発行企業に対する投資家の評価が色濃く反映されている。
SBGが9月に発行した償還期限7年で総額4000億円の個人向け社債には、1.38%の金利が設定されていた。同時期に三菱UFJが発行した440億円の劣後債は10年超の償還期限で0.452%の金利である。
劣後債は破綻時の返済順位が遅れるリスクを見込んで、高めの金利に設定される。それでもなお、SBGの金利の3分の1で済んでいるという事実が、SBGに対する金融市場の評価であることを、忘れてはならないだろう。
SBGの屋台骨を揺るがしかねない、と見られていた米通信子会社スプリントとTモバイルUSの合併計画に前進の兆しが報じられたのが今春だが、米連邦通信委員会(FCC)の承認は依然保留されている。複数州の規制当局が合併の阻止を求める訴訟の審理も12月初旬に開催される予定のため、今後の推移は予断を許さない。
訴訟の禊(みそぎ)を見届けてから、FCCが承認へ向かうというストーリーが自然だが、シナリオ通りにいかないことはウーバーやウィーの件で思い知らされている。FCCの判断が示されるまで、気は抜けない。
SBGは5月の決算説明会でSBFの投資家利回り(内部収益率)が45%になったことを公表し、「2号ファンド」への布石を打っている。僅か6カ月で状況が逆転してしまったSBGは、11月6日に行われる19年4~9月期の決算説明会で、どんな見解を示すのか?まさに目を離せない日々が続く!(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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