関連記事
産総研など、機能性ナノ粒子の高速合成法を開発 環境分野での素材開発を加速
マイクロ波水熱合成プロセスの特徴(左)と、VO2ナノ粒子の走査型電子顕微鏡写真とVO2ナノ粒子を用いたサーモクロミックフィルムの外観(右)(画像:産業技術総合研究所の発表資料より)[写真拡大]
産業技術総合研究所(産総研)は15日、マイクロ波加熱を使い、二酸化バナジウムの機能性ナノ粒子を高速で合成する方法の開発に成功したと発表した。産総研では、エコカーやエコ住宅等で使われるスマートウィンドウ等の研究開発を後押しできるのではないかと、期待している。
【こちらも】物質・材料研究機構、液体のエレクトレット材料を開発
■スマートウィンドウとは?
スマートウィンドウとは、電気、光、熱等の外部からの刺激によって光の透過率、反射率等が変化する窓をいう。例えば、気温が高いときには、太陽光線に含まれる熱線である近赤外線を遮蔽し、気温が低いときには、それを透過させる。ハイブリッドカーや電気自動車等の次世代自動車やエコ住宅等での需要が見込まれている。
このようなスマートウィンドウに使われる素材として期待されているのが、二酸化バナジウムだ。二酸化バナジウムは68度を境に性質が自律的に変化し、68度以下では近赤外線を透過するが、超えると近赤外線を遮蔽する。
しかし、これまでこの二酸化バナジウムを機能性ナノ粒子として合成するためにはさまざまな問題があった。
従来の合成方法では、容器を温め、間接的に中の溶液を温めていた。そのため、溶液の温度を上げるのに時間がかかるだけではなく、溶液の温度が場所によってばらついてしまっていた。また容器に熱が残るために、溶液を冷ますのに時間がかかるだけではなく、あまり温度を上げることはできなかった。
これらのことから、ナノ粒子を合成するのに時間がかかるうえに、ナノ粒子の大きさが大きくなりすぎたり、ばらついてしまったりしていた。
■マイクロ波水熱合成法
研究チームはこの問題を解決するために、マイクロ波による加熱を使った。マイクロ波は電子レンジ等でも加熱のために使われている。
マイクロ波を加熱に使うことで、容器の中の溶液を急速かつ均一に加熱でき、また、容器に熱も残らない。そのため研究チームは、これまでナノ粒子を合成するのに30時間程度かかっていたものを1時間以内にまで短縮することに成功。また、ナノ粒子の大きさを小さくし、その大きさを均一にすることにも成功した。
さらにこの方法を使うと、視認性等品質を高めるためにタングステン等の元素をこれまでよりも高濃度で添加できるという。
研究チームでは、この方法を使うことで、短時間で高品質の二酸化バナジウムの機能性ナノ粒子を合成でき、エコカーやエコ住宅等で使われるスマートウィンドウ等の研究開発を後押しできるものと期待している。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
スポンサードリンク
関連キーワード