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「不満分子」も「改革者」も出発点は同じ
仕事をしていれば、それがどんな立場であっても、何かしらの不満があるのは普通のことです。違いがあるのは、その不満に対してどんな行動をとるかです。
ある会社の課長は、部下の若手社員から、会社に対する不満を突き上げられ、いろいろ悩んでいました。言われることは確かに正論ではあるものの、そう簡単には変えられない会社の事情も知っています。
その都度説明をするものの、なかなか本人の納得は得られません。
そんなやり取りが続くので、課長は部下の若手社員に対して、少しイラつきを感じています。
上司からすれば、いちいち不満をぶつけてくる部下は、あまり好ましいものではありません。やっぱり自分の指示に忠実で、不平不満を言わずに働く部下の方が、上司としては扱いやすいですし、良い評価をしてあげたくもなるでしょう。
しかし、それはもう少し冷静に考えなければなりません。
「不満がない」というのは、一見良さそうに感じますが、それは「今のままでよい」「改善は必要ない」という認識を表します。
逆に「不満」は、現状に対する課題指摘であり、改善が必要だという認識です。それがなければ、そもそも「不満」を持つことはありません。つまり、「不満がある」ということは、それが課題だと思っていて、直した方がよいという「改革意識」につながっています。
「改革」の出発点は、多くが現状への「不満」からです。
ただ、問題はそこから先で、その後の姿勢や行動で、ただの「不満分子」になる人と、本当の「改革者」になる人に分かれていきます。その違いはとても単純で、「不満分子」は問題を会社のせい、上司のせい、他人のせい、環境のせいなどにして、自分では行動しようとせず、「改革者」は、何か少しでも改善しようと上司に相談し、周りに働きかけ、何かできることから提案、実行をしようとします。
これはある会社であったことですが、中途採用面接での過去実績の話から、「課題指摘が的確」「問題意識がある」と評価されて入社した社員がいました。しかし、実際に入社してみると、何かと常に不満を言うだけで、そのことに対して自分では行動しない「不満分子」だったということがありました。
あくまで私の経験ですが、一度「不満分子」になってしまった人が、そこから「改革者」に戻った例は、まだ見たことがありません。自分では行動せずに、批判や評論に終始することが身についてしまっていて、一度そうなってしまうと、それを変えることはとても難しいようです。
反対に、自ら行動する「改革者」だった人が、ただの「不満分子」に変わってしまったのは、何度も目にしたことがあります。
これは、年齢とともに行動力が衰える、経験を積むほどに事情が分かってあきらめる、偉くなって自分でやらずにすむ習慣になるなど、様々な理由が考えられます。同じく、行動しないことが身についてしまうと、それを変えることは難しいです。
組織の改革、改善の出発点は「不満」ですが、その後の意識次第で、本当の「改革者」になったり、ただの「不満分子」で終わったりします。
「不満」自体は、問題意識の表れとして、否定してはいけません。上司にとって扱いやすい従順な部下は、往々にして問題意識が足りないことがあります。逆に不満や反発をぶつけてくる人は、間違いなく問題意識を持っています。しかし、その後の行き先は、本人の姿勢や周りの働きかけによって大きく変わります。
「不満分子」も「改革者」も、出発点が同じということは、注意しておかなければなりません。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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