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ワーケーション進捗に伴う一抹の懸念
「ついにここまで来たか」と、「ある種の階層・格差社会化」という「懸念」を抱きながらもいま実感している。「働き方改革」の話である。
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ワーケーションの7文字が最近、メディアに踊っている。仕事(ワーク)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語だという。私が初めてこの造語を耳にしたのは、JALが「みらい創りラボ・いのかわ」(鹿児島県大島郡)を活用して、2018年11月下旬から12月上旬にかけて行ったテレワークの実験だった。
しかし、いわゆるテレワークとは趣を異にしていた。参加したのはJALの社員10名とその家族10名の計20名。件のテレワーク施設は大島郡の管轄エリアとなる奄美群島の徳之島にある。富士ゼロックスと徳之島町が運営していた。
彼の地は言い換えれば観光地。そこで家族と休暇を楽しみながら仕事もこなそうという、一歩踏み出した試みだった。いわばワーケーションのはしり、と言える。JALはいまパイロットや客室乗務員を除く地上組社員のワーケーションの具現化を進めている。
以降、ワーケーションの(実証)実験が日増しに増え注目を集めている。例えばNTTコミュニケーションズが運営する「ハナレ軽井沢」が6月にオープンした。言うまでもなく長野県の軽井沢は、日本を代表する避暑地。施設には「電話会議OK」「高速無線ラン」「プリンター」完備の部屋などが整備されている。避暑というバケーションを楽しみながら、仕事もできる環境にある。
また近畿日本ツーリストは「日本1の標高」が売りのホテル(長野県駒ケ根市)での3泊4日のワーケーションツアーができる施設を、7月23日にオープンした。
果たして、どんな企業がワーケーションの枠組み(場)を活用しうるのだろうか。それ相応のコストが大前提になる。
「働き方改革」に関しては、こんなデータもある。民間の調査機関IDCが今年1月に実施した調査(1000社から回答)によると、実施している企業は「社員1000人以上の大企業78.3%、100人から999人の中堅中小企業53.5%」。
だがテレワーク関連の実行率には大企業と中堅中小企業の間には「倍以上の差」が見られた。その背景のポイントの一つを「ITツール活用の差異:大企業で約半数に対し中堅中小企業約36%」と指摘している。
周知の通り、日本の企業構成は「富士山」に例えられる。頂から2割が大企業。以降の裾野までは中小企業。現時点ではデータこそないが、ワーケーションを導入できる企業はせいぜい「頂から2割の企業」と言えるのではないだろうか。
また働き方改革の目的の一つが「生産性向上」にあることは論を俟たない。今年の「地域別最低賃金額改定の目安」について、日本商工会議所の三村明夫会頭は政府が6月の閣議で決定した「経済財政運営と改革の基本方針2019」にふれてこうコメントしている。
「(最低賃金引上げに際して、)生産性向上と取り組む中小企業への思い切った支援策や、下請け業者に対する労務費上昇分の価格転換策を講じていく旨を定めているが、これらの施策を早期に具現化させることを強く要望する」。
働き方改革の推進は進めるべきだ。が、「階層化社会」という副作用をもたらす懸念が正直、払拭しきれない。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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