アサヒビールとパナソニック、自然由来の環境に優しいビアカップ開発

　アサヒビールとパナソニックが協働で「高濃度セルロースファイバー成形材料」を活用した、世界初のビール用カップ「森のタンブラー」を開発した。屋外におけるイベントや店頭での持ち帰り用のビール類の提供を想定し、2019年8月9日からテスト展開を始める。

　「高濃度セルロースファイバー成形材料」は、パナソニックが独自に開発したナノ～マイクロに微細化されたパルプ成分を55%以上含有する新開発の樹脂。同社独自の金型・樹脂成形技術により、独特の風合いと強度を実現できた。パナソニックが受託した環境省の委託業務で得られた成果を活用した。

　今回テストに使う「森のタンブラー」は、高い形状自由度とリユース可能な強度を実現するとともに、画像や文字を自由にデザインすることができるため、各種イベントなどにおいてノベルティや記念品としての活用も期待できるという。また、カップ表面にセルロース繊維由来の細かな凹凸を施すことで、ビール類の持続性のあるきめ細かな泡をつくり出す特徴も持つ。

　「高濃度セルロースファイバー成形材料」は、間伐材などの木材から精製したパルプを主原料としているため、自然由来の木の風合いを持つ。また、カップ成形時の温度条件によって色目が変化するため、6種類の中から希望の色調を選択できる。廃棄する際にも紙製品(可燃物)として分類することができ、プラスチックごみの低減にも貢献する環境にやさしい素材だ。

　2019年8月9日と8月16日、そして、いまのところ日程は未定だが9月に、小湊鉄道が運行するSATOYAMAトロッコ「涼風ビール列車」(オープンビアガーデン)にて、この「森のタンブラー」で『アサヒスーパードライ』生ビールを提供する計画だ。提供した森のタンブラーは、記念に持ち帰ることができる。

　また、2019年8月18日には、パナソニックスタジアムで行うガンバ大阪対ジュビロ磐田戦の開催前イベントにおいて、「森のタンブラー」とともに『アサヒスーパードライ』の生ビールを販売する。

　加えて、2019年10月4日～6日には、茨城県つくば市・つくばセンター広場で開催される「つくばクラフトビアフェスト2019」において、オリジナルデザインの「森のタンブラー」が5000個採用される予定だ。

　これらの取組みを通じて、会場内でのリユースや記念に持ち帰ることができるカップとして使用してもらい、プラスチックごみの削減効果を検証する予定だ。

　アサヒグループは、本年2月に「環境ビジョン2050」を策定し、2050年までに、事業活動における環境負荷ゼロ(ニュートラル)を目指し、グループの独自技術や知見を生かした新たな環境価値創出に取り組んでいる。

　京都大学生存圏研究所の矢野浩之教授によれば、「豊富に存在する木材などの植物資源から作るセルロースは、持続型の脱炭素社会を支える大型産業資材として世界中で研究が進められています。今回、泡の良さのような新たな特徴を活かし、セルロースファイバー成形材料が世界で初めてビール用カップに使われることは、人と環境に優しい植物材料には多くの可能性があることを示しています。今後、様々なバイオマス材料や食品加工後の植物性残渣の活用が進むことを期待します」とのコメントを寄せている。(編集担当:吉田恒)

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