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性犯罪を考える (上) 緊急避妊薬論
緊急避妊薬(アフターピル)を巡る論争が盛り上がりを見せ始めている。平たく言えば、「妊娠をしたくない」とする女性への対応策である。
厚労省の「オンライン診療の実施に関する指針の見直しに関する検討会」は6月10日の会合で、望まない妊娠を防ぐアフターピルのオンラインでの処方を実施できるようにすることを、「条件付き」で了承した。これを受け厚労省は指針改定版を7月に明らかにする予定だという。
但し「条件」を知ると、対象の女性が性的暴行を受けた場合に限られると読み取れる。「近くに受診可能な医療機関がない、あるいは性犯罪の被害を受けて対人恐怖がある場合に限る」という案だとされているからである。
対して例えば性犯罪・働き方・教育のジャンルで取材・執筆をしている女性ライターの小川たまか氏は、「アフターピルは72時間以内の処方が必要。妊娠を望まない女性の身を守るために、海外のようにできる限り入手しやすくするべきだ。オンライン処方の解禁は一段階進んだかと思えたが、まさかの条件付き。甚だナンセンス」(YAHOOニュース)で落胆の感を露わにしている。広範にこんな疑問が聞かれる。
★誰が「性犯罪の被害」を認定するのか。無理やりに性交を強いられた被害者が警察に通報・相談したケースは僅か2.8%に過ぎない(2016年、内閣府調査)。(検討会の)枠組みでは、多くの犠牲者は救われない。
★性犯罪はパートナー(配偶者・恋人)から受ける場合もある。刑法では裁かれる。が、パートナーからの性犯罪を「被害」と認識している人は少ないのが現実。検討会の指針には、踏み込む不足の感が否めない。
同感である。と同時に、性行為を行う男女の「妊娠」に対する認識の甘さを危惧する。具体的には例えば「避妊」の措置は万全だろうか。よく「できちゃった婚」を耳にするが、まあこれはこれでよしとしよう。「おろして欲しい」「子供なんかまだいや」という身勝手さは、許されない。堕胎(人工中絶)について「母体保護法」はこう定めている。
*医師会の指定医師は、以下に該当する妊婦に対し本人及び配偶者の同意を得て人工中絶を行うことができる。
*妊娠の継続・分娩が経済的理由や母体の健康を著しく害する恐れがある者。
*暴行若しくは脅迫により、また抵抗・拒絶することができない間に姦淫されて妊娠した者。
*配偶者が知れない時、若くはその意思を表示することができないとき。
セックスは人間という動物の本能ではある。が・・・。利用しているバスで流れる「深夜のスマホ歩きは、変質者に気づけないことがあります」という含みのあるメッセージを、本稿を記しながら思い出した。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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