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研究進む重力波天文学の今後 出発はアインシュタインの予言から
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今からちょうど100年前の1919年5月29日に発生した皆既日食で、太陽の近傍に見えていた恒星の位置についての観測結果が、世間の注目を集めた。アルバート・アインシュタインがそれよりも数年前に一般相対性理論の中で予言した、重力が光を曲げるという現象が、実際に確認されたためである。この観測結果がきっかけとなり、人類の重力に対する研究熱が高まり、現在の重力波天文学に至っている。
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いっぽうで重力波の存在は、一般相対性理論の発表から2年後にアルバート・アインシュタインによって予言されていたにもかかわらず、それを検出するには、多くの時間を要した。人類史上初めて重力波の観測に成功したのは、1919年の皆既日食観測から、96年後の2015年9月14日のことであった。これはアメリカの研究チームが、巨大なレーザー干渉計を用いて観測した結果によるものであった。
中性子星やブラックホールといった、小さいながらも質量は大きな天体が連星系となった場合、エネルギーが重力波により放出され最後には合体するとみられているが、重力波は非常に微弱で観測が難しい。観測装置の感度や精度の向上というテクノロジーの進歩と、重力波の発生源、つまりこれを検出できる天体の候補の絞り込みが重力波検出のカギを握っていた。
これまでに重力波が検出された天体は、恒星質量レベルのブラックホールのペアや、合体する2つの中性子星で、いずれも重力波の発生が予測されていた対象であった。しかし、銀河の中心に存在している巨大ブラックホールの合体により発生する重力波は、現時点で検出されていない。
欧州宇宙機関(ESA)では、AthenaとLISAという2つのミッションによって、銀河の中心に存在する巨大ブラックホールについての研究を進めている。Athenaは、史上最大のX線天文台で、銀河の中心にある超大質量ブラックホールが、どのように形成し進化するかという謎の解明に威力を発揮することが期待されている。
またLISAは、最新のレーザー干渉計であり、2つの超大質量ブラックホールが銀河の合体中に衝突したときに放出される、低周波重力波を検出することが期待されている。
これらの観測装置を組み合わせることで、巨大で非常に高密度の物体がどのようにして形成されたのかが究明されるだろう。これら2つのミッションは、2030年代初頭に打ち上げが計画されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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