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これからの時代、経営者は従業員の帰属意識の低下にどう向き合う?
働き方改革関連法が4月1日に順次施行され、残業時間の上限が月45時間となり従業員が社内で過ごす時間が短縮化へと向かっている。また、IT系を中心に大手企業では副業の解禁が進んでいる。こうした時代の流れがもたらすものは、従業員の会社に対する「帰属意識」の低下だ。
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年功序列と終身雇用制度が機能した高度経済成長期のような、経営者と従業員が家族のように一体となって会社を大きくする、という時代はとうに過ぎ去ったと言えよう。ひとりひとりが組織に縛られず自分らしい働き方を選択する時代に入ったことで、従業員を率いる経営者の意識改革が問われている。
自らの事業の繁栄が第一義にある経営者から見れば、会社の一員である以上、従業員は会社の利益のために働いてもらわなければならない。しかし従業員は、もはや今所属する会社のため「だけ」に人生を捧げることはなく、自身の職業倫理観に基づいて働き、将来的には転職や起業を視野に入れている者もいる。経営者と従業員の間には、会社への帰属意識に温度差があるのは明確だ。経営者は、この現状にこれからどう向き合えばいいのだろうか?
鍵となるのは、従業員を「家来」ではなく「パートナー」と捉える発想の転換にある。一国一城の主である社長を頂点に、上下関係がはっきりとしたヒエラルキー型縦社会から、共通の目的(究極的には「お金を稼ぐ」こと)のもとに集まった個々のプロフェッショナルが横に並ぶようにつながり、経営者が司令塔となってそこで働く意義として「企業理念」を掲げる、という組織のあり方の変化を受け入れられるか、ということになる。そうなるともはや、「殿様気分」ではいられない。
「この会社で働きたい」と、会社を愛してくれることを求めるのではなく、「この会社なら働きたい」と思わせる、働き甲斐のある環境を整える。これが、今後ますます人材の流動性が加速する企業社会において、組織を束ねる経営者に必要なマインドだろう。
人口減少が進む中、働く人たちの生産性を上げることで日本社会全体の「稼ぐ力」を高めていくことが、「働き方改革」の思想の原点にある。この流れが今後も進む以上、「稼ぐ力」を身に着けた人はもはや1カ所にとどまることはなく、さらに上を目指し己の可能性を伸ばしたり、夢の実現を追求することになる。「帰属意識」が持続するのは難しいということを前提に、従業員を育てて、各自が持つ能力を最大限に発揮させていずれ送り出す、そして新たに迎え入れる、という「人材の循環」を生み出すことが、今後の経営者に求められる「社会的責任」になるのではないか。
個人の価値観が多様化し、ひとりひとりが自分らしい働き方を求める中で、それに呼応した社会制度が今後も構築されていくのは必至だ。自分が理想としている生き方に導いてくれることが、これからの時代に「選ばれる」経営者像だろう。(記事:岡本崇・記事一覧を見る)
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