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近鉄グループ、インバウンド需要の取り込みと総合力の発揮で収益増大へ挑む
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近鉄グループホールディングスは4月2日、近鉄不動産が管理運営を行っている天王寺公園エントランスエリア「てんしば」で、2018年度の年間入場者数が過去最多の約440万人になったと発表した。
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近鉄は日本一の超高層ビル「あべのハルカス」の収益基盤強化を事業戦略の基本テーマとしており、「てんしば」の波及効果により、あべの・天王寺エリアのにぎわいを創出しようとしている。
近鉄は1910年大阪と奈良を結ぶ奈良軌道として設立され、大阪~奈良間の開通に次ぎ、奈良から天理・橿原神宮方面へ延伸し、さらに大阪から宇治山田まで開通し、1938年には名古屋へのルートを確立した。
2015年に持株会社へ移行し、現在では近畿・東海2府4県で国内私鉄最大の総延長約500kmを有する近畿日本鉄道を中心に、前期営業収益の内鉄道、バス、物流、海運などの運輸事業で18%、近畿・東海・首都圏の分譲、賃貸を行う不動産事業で12%、百貨店、スーパーマーケット、駅構内事業を行う流通事業で31%、都ホテル、旅館、海遊館、志摩スペイン村などを営むホテル、レジャー事業で38%と大きく様変わりしてきた近鉄の動きを見ていこう。
■前期(2018年3月期)実績と今期見通し
前期営業収益は1兆2,227億円(前年比2%増)で、営業利益は前年よりも2億円減の646億円(同0%減)であった。
営業利益減少の要因としては、運輸事業で減価償却費の増加とバス、タクシー、鉄道施設整備事業の減収などにより18億円、不動産事業で前期保有土地の大口売却益の反動減で5億円、ホテル、レジャー事業で水族館「ニフレル」の開業効果の反動減で2億円の減益要因に対し、流通事業で百貨店「あべのハルカス」のインバウンド需要の取り込みなどで17億円、その他でケーブルテレビ、情報処理の好調と全社調整で6億円の増益によるものである。
今期第3四半期(4-12月)は営業収益が9,164億円(前年同期0%増)、営業利益が534億円(同0%増)の実績を受けて、今期は営業収益1兆2,380億円(同1%増)、営業利益640億円(同1%減)を見込んでいる。
■経営計画(2016年3月期~2019年3月期)による事業推進戦略
成長へのシフトと財務健全性の両立を図りつつ、グループ総合力を発揮する下記の戦略を推進する。
1.「あべのハルカス」の収益基盤強化
地下5階地上60階で高さ300mの日本一の超高層ビル(百貨店、美術館、オフィス、ホテル、展望台の複合ビル)の収益性向上のため、ターミナル駅直結の利点を生かし、インバウンド需要の取り込みと「てんしば」など周辺との相乗効果により、「あべのハルカス」としての前期連結売上高1,247億円(同14%増)、営業利益67億円(同49%増)を達成。
2.インバウンド、観光による収益増大
・インバウンド誘客継続: グループ連携して東アジア、東南アジア向け営業強化と百貨店の電子マネー対応などの推進。
・鉄道サービスの充実: 多言語対応、快適な新型特急車両の投入とフリーゲージトレインの開発により、京都~吉野間を乗り換え無しで運行。
・ホテル事業の強化: 全店にハラル認証、祈祷スペースのムスリム対応推進、2019年秋近鉄博多ビル200室、2020年春大阪堺筋本町300室新規出店。
3.不動産事業の展開
首都圏エリアで新規物件取得、名古屋エリアでは自社物件でタワーマンション開発、関西エリアでマンション展開と海外ベトナムで住宅分譲進出。
インバウンドと総合力の発揮で収益増大へ挑む近鉄グループの動きを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る)
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