【どう見るこの相場】まさかまさかの「オセロ相場」なら最高値銘柄の絶対高値期日向かいに「ディール」余地

2019年1月21日 09:18

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 これは、いわゆるトランプ流の「ディール(取引)」なのだろうか?海外メディアが、トランプ政権内で中国に対する制裁関税の一部、もしくは全部を撤回する提案がされたと報道した。にわかには信じられないニュースであった。米国は昨年7月以来、制裁関税の第1弾、第2弾を発動、今年2月末の米中貿易協議期限までに合意に至らなければ10%の軽減税率を25%に引き上げるとブラフをかけたばかりである。そればかりか中国のスマートフォンメーカーの締め出しや中国の経済構造改革政策や成長戦略にまで内政干渉ばりのクレームをつけ、ことは貿易摩擦を超えて2大強国の覇権争いの様相を帯びたと新冷戦懸念も強めており、米政府機関閉鎖の長期化で不評を買っているトランプ大統領の人気挽回のための苦し紛れの禁じ手の妥協提案とも受け取れたからだ。

 しかし前週末18日に別の海外メディアが、中国も、米国からの輸入を大幅に増加させ2024年には対米貿易黒字をゼロにする提案をすると報道され、米中の歩み寄り、相互譲歩はどうやら「フェイク・ニュース」ではないとのコンセンサスが形成され、米中貿易摩擦の緩和期待が高まってきた。米国のダウ工業株30種平均(NYダウ)は、4日続伸しあの中国の華為技術(ファーウェイ)の副会長が代理逮捕されて急落する前の1カ月半ぶりの高値に迫り、原油先物(WTI)価格も、米中貿易摩擦緩和による中国経済の持ち直しによる需要拡大を期待しやはり昨年12月上旬以来の高値まで買い進まれた。

 となると昨年12月の世界的なクラッシュ相場は、いったい何だったかということになる。米中貿易摩擦の激化が、米中景気の減速懸念を強め、米国ハイテク株の総崩れ、中国関連株売り、安全資産買いの円高進行、企業業績の先行き不安につながった。「オセロゲーム」に例えるなら盤面は、すべて「リスク・オフ」の黒石で埋め尽くされたことになる。ところが今回、その本家本元の米中貿易摩擦が、黒石から白石に裏返りそうなのである。となると続いて懸念材料の数々が、黒石から「リスク・オン」の白石に裏返ってくるかもしれないのである。目も当てられないのが、クラッシュ相場に慌てて損失覚悟でポジションを手仕舞った投資家である。日本電産<6594>(東1)の永守重信会長ではないが、「尋常でない変化(損失)が起きた」とホゾを噛んでも悔やみ切れない。

 しかし、ここは気を取り直すところである。なおトランプ大統領の「ディール」には警戒は怠れないが、このまさかまさかの「オセロ相場」に追従して、黒石がどこまで白石に裏返るか見極め、「ディール」余地を探るのが正解となりそうだ。問題は、どの銘柄に狙いを定めるかの銘柄選択になる。そこで注目したいのが、この1月から2月にかけて絶対高値期日が到来する銘柄の期日向かいである。この高値期日到来銘柄は、昨年7月から8月初めに上場来高値や昨年来高値まで買い進まれた銘柄である。当時は、7月6日に米国の中国に対する制裁関税の第1弾が発動され、8月1日にはトルコに対する米国の経済制裁が発表され「トルコリラ・ショック」が起こった波乱相場の渦中にあった。その相場環境下、独自の個別材料で逆行高した銘柄ばかりで、その後の株価や株式需給の調整も十分で、カラカラに枯れた状態でいったん火がつけば燃え上がる展開も想定される。今後、仮にトランプ大統領の「ディール」が不調に終わったとしても、逆行高素地を内包しているともいえるわけで、トランプ大統領を出し抜く「ディール」を期待したい。

■エーザイ、スズキなど昨年7月~8月の逆行高相場の再現期待材料はキープ

 絶対高値期日銘柄でまず注目されるのは、日経平均株価の構成銘柄となっている主力株である。そのなかでリード役となりそうなのが、昨年7月、8月にそれぞれ上場来高値まで買い進まれたエーザイ<4523>(東1)とスズキ<7269>(東1)である。エーザイは、アルツハイマー治療薬の臨床検査で良好な結果が出たことを発表して2日間のストップ高を交え窓を開けて上場来高値1万1490円まで急騰、その後の希望退職者募集などで8028円まで調整し、急騰時に開けた窓をほぼ埋め、新年に入って抗てんかん剤の中国での優先審査指定、新不眠障害治療薬の米国での新薬承認申請などを相次ぎ発表した。前週末には希望退職者募集の第1回目の結果も開示しており、「リターン・リバーサル」に弾みをつけそうだ。

 スズキは、中国市場から撤退しインドに特化する海外戦略が、米中貿易摩擦の圏外にあるとして人気化し、今2019年3月期第1四半期(2018年4月~6月期、1Q)業績が高利益進捗率を示したことも加わり上場来高値7680円まで急騰、その後は、今3月期業績を上方修正したことにも反応せず5056円まで調整し、足元ではこの調整幅の3分の1戻し目前までリバウンドした。2月5日には今期第3四半期(2018年4月~12月期、3Q)決算の発表を予定しており、リバウンド幅拡大の展開も有力になる。

 このほか上場来高値更新ではないが、昨年来高値まで買い上げられた銘柄も要注目で、積層セラミックコンデンサの値上げや生産能力増強などで買われた太陽誘電<6976>(東1)、村田製作所<6981>(東1)、サッカーのワールドカップを前に加入者増期待で昨年来高値をつけたスカパーJSATホールディングス<9412>(東1)のほか、大成建設<1801>(東1)、日本板硝子<5202>(東1)、三菱自動車<7211>(東1)、KDDI<9433>(東1)なども、セレクト対象に浮上する。

■低PER・PBRの準主力最高値株は配当利回りでも市場平均を上回り出色

 中堅・小型の準主力株では、黒鉛電極の相次ぐ値上げや今2019年3月期業績の上方修正で上場来高値9230円まで買い進まれ、この時の上昇幅以上に6580円まで下方調整した黒崎播磨<5352>(東1)を筆頭にしたバリュー株が要注目となる。業績上方修正を材料に最高値更新の品川リフラクトリーズ<5351>(東1)やバルカー<7995>(東1)のほか、自己株式取得と好決算のシナジー効果で同じく最高値をつけた堺化学工業<4078>(東1)、メルコホールディングス<6676>(東1)、猛暑関連人気に好決算評価が上乗せとなった福島工業<6420>(東1)、好決算が最高値更新要因となった三菱総合研究所<3636>(東1)、日本ケミコン<6997>(東1)、蝶理<8014>(東1)などである。PERは6倍台~13倍台と軒並み市場平均を下回って割安で、PBRが1倍を割る銘柄も少なくなく、配当利回りもバルカーの4.1%、黒崎播磨の3.7%などインカム妙味を示唆しており、絶対高値期日向かいで報われる展開が想定される。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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