宇宙から飛来する謎の電磁パルス「高速電波バースト」を新たに観測 オーストラリア

2018年10月21日 21:28

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高速電波バーストを観測するASKAPのイメージ図(C)OzGrav, Swinburne University of Technology.

高速電波バーストを観測するASKAPのイメージ図(C)OzGrav, Swinburne University of Technology.[写真拡大]

 オーストラリアのCSIRO電波望遠鏡で「高速電波バースト(FRB)」という宇宙空間の深淵部からくる電波の強力な点滅を新たに観測した。これによって2007年の発見以来その観測数がほぼ倍増したことになる。

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 高速電波バーストとは、持続時間がわずか数ミリ秒にも関わらず、非常に強い電磁パルスが宇宙のどこかから突発的に放出されるという、未知の天文現象の1つ。そのエネルギーは太陽5億個分とも言われており、非常に桁外れだ。非常に強い磁場を持つ中性子星やブラックホール、高エネルギー電磁波を放射するマグネターなどが発生源として挙がっているが、未だに正確な場所の特定には至っていない。

 今回観測を行ったのはオーストラリア・スウィンバーン工科大学のライアン・シャノン氏らの研究チーム。オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の電波望遠鏡Australia Square Kilometre Array Pathfinder(ASKAP)の新技術を駆使し、これまでの倍となる数の高速電波バーストを観測、また高速電波バーストが我々の銀河系付近からではなく宇宙の反対側から飛来していることを証明した。

 高速電波バーストの存在が知られたのは2007年。オーストラリアのパークス天文台で過去の観測データを調べていた天体物理学者が、強力なエネルギーが検出されていることに気付いたことを発端とする。この天文台では過去に、長年観測されていた異常信号が電子レンジによるものだった、という例があり、当時の天文学者たちはいささか懐疑的であった。後の観測により高速電波バーストは宇宙で発生したものであると証明され、現在では1日に1万回も発生していると推測されている。

 共同研究者である国際電波天文学センター(ICRAR)のジャン=ピエール・マッカート博士によると、高速電波バーストは数十億年にわたって宇宙空間を旅しながら時折ガスの雲などを通過する。このような通過が起こるたびに高速電波バーストに含まれる波長がそれぞれ異なる量で減少するため、それぞれの波長の到着タイミングを観測することで電波バーストがここに来るまでどれほどの物質を通過してきたのかをうかがい知ることができるということだ。「観測によると高速電波バーストは遠くから来ていることを示しており、我々の銀河に来るまでにバーストが通過してきたであろう未知のものを検出することができる。これは非常に心躍る発見だ」と博士は語る。

 今回の観測で使用されたASKAPは、現在建設中の電波望遠鏡Square Kilometer Array(SKA)の先行望遠鏡である。将来SKAが観測を開始(2020年に予定されている)した暁には、高速電波バーストの起源にも迫る研究ができると期待されている。(記事:秦・記事一覧を見る

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