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中性子星から未知の現象を発見 ハッブル宇宙望遠鏡が明らかに
中性子星「RX J0806.4-4123」の想像図。 180億マイルもの円盤から赤外線を検出したと説明がつく (c) NASA, ESA, and N. Tr’Ehnl (Pennsylvania State University)[写真拡大]
NASAは18日、ハッブル宇宙望遠鏡が中性子星の周辺から放出される謎の赤外線を検出したと発表した。X線のような高エネルギーの電波放射に関連づけて、中性子星はこれまで研究されてきたが、今回の発見は中性子星において赤外線も研究対象となることを示唆する。
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■中性子星は恒星の進化の一形態
太陽のような恒星は、その重量によって進化の過程が異なるというのが現在大勢の見解である。太陽の8倍以上の質量をもつ恒星は終末期になると、自らの重力を支えきれなくなり重力崩壊を引き起こす。重力崩壊によりエネルギーが解放され、星が吹き飛ぶ現象が「超新星爆発」と呼ばれる。
超新星爆発後に中性子からなる圧縮された核が残り、これが中性子星と呼ばれる。超新星爆発後に中性子星になるか、ブラックホールに進化するかは恒星の質量によって決まる。超新星爆発後に残った芯の質量が2倍から3倍程度ならば、中性子星の状態でとどまるとみられる。
一部の中性子星は超高速で回転しながら、強い放射線のビームを放出する。パルサーと呼ばれる現象で、X線やガンマ線、電波を発生するとみられる。ところが今回ハッブル宇宙望遠鏡に搭載した近赤外線ビジョンで、中性子星「RX J0806.4-4123」を観測したところ、近傍から近赤外線が放出していたという。
■中性子星から赤外線が放出される理由は2種類
中性子星から赤外線が放出される理由は、2つの理論によって説明可能だという。
1つめは、パルサーを取り囲む塵でできた円盤が存在するという説だ。超新星爆発により放出された物質が再び中性子星へと戻る「フォールバック」により生じた円盤が、中性子星の周辺に形成される。この円盤を構成する物質と中性子星とが相互作用し、パルサーが温められ中性子星の回転を減速させるという。
研究を主導したペンシルベニア州立大学のベッティーナ・ポッセルト准教授は次のように語る。「ハッブル宇宙望遠鏡で検出した赤外線がフォールバックによる円盤だと確証されるならば、中性子星の進化についての従来の見解を改める可能性がある」。
もうひとつは、パルサーの磁場から生じる「パルサー風」と呼ばれる素粒子の風が、星間物質に衝突しているという説だ。パルサー風星雲であるとすれば、中性子星はパルサー風を伴う。中性子星の超高速回転と強い磁場とで発生される電場により、粒子が加速されることで、パルサー風が生じる。中性子星は音速よりも速いスピードで星間物質と衝突、その衝撃で赤外線が生じる可能性があるという。
今回の研究結果はハッブル宇宙望遠鏡によるデータをもとに報告されたが、2021年に打ち上げ予定のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を活用すれば、中性子星の進化についてさらに理解が進むことが期待される。
研究の詳細は、Astrophysical Journalにて17日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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