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JAXAら、宇宙空間での高エネルギー伝搬を検出 オーロラ出現や人工衛星の障害に
研究で捉えた水素イオンと電磁波、電磁波とヘリウムイオンとの相互作用を示すイメージ。(c) 東京大学[写真拡大]
物質には個体・液体・気体、そしてプラズマの状態がある。太陽風が発生する太陽のコロナは、100万度という極めて高温のため、水素などの気体は、分離して電子と水素イオンというプラズマの状態になる。太陽風の95%は水素イオンで、残り5%はヘリウムなどのイオンや電子で構成されている。
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オーロラが起きる現象は、太陽風(プラズマ)として運ばれてくる、高エネルギーの荷電粒子が、地球の地上から100キロメートル上空の大気圏と宇宙空間の境界線付近に、降り注ぐことで発生する。また、人工衛星などに障害を与えるほどの高エネルギーが、地球のすぐ近くの宇宙空間にたびたび流れてくる。
では、この高エネルギーの荷電粒子は宇宙空間においてどのようにして発生するのか。JAXA(宇宙航空研究開発機構)は7日、東京大学の北村成寿氏率いる国際研究チームが、MMS(Magnetospheric Multiscale)と呼ばれる衛星編隊からのデータを解析し、地球周辺の宇宙空間において、水素イオンからヘリウムイオンへとエネルギーが運ばれる現象を捉えることに成功したと発表した。
私たちの周辺では、物質と物質がぶつかり合うことで、熱や運動などのエネルギーを発している。しかし、地球周辺の宇宙空間では密度が低いため、粒子同士は滅多にぶつかることがない。ではどうやってエネルギーを移動させるのか。この移動は、宇宙空間で波の役割をする「電磁波」を介して行われる。海で船が起こした波が、近くの別の船に影響を与えることと同じ原理になる。
北村氏は、「地球周辺の宇宙空間は天然のプラズマ実験室と言える。我々は、電磁波と荷電粒子の相互作用によって、粒子同士が衝突することなく、エネルギーが伝搬されているというデータを得ることに成功した」と述べている。
MMS衛星編隊は、NASAが2015年に打ち上げた、4機の同じ衛星からなる編隊で、様々な計測器が搭載されている。その中には、JAXA宇宙科学研究所の齋藤義文氏がリードし、国内メーカーが製作した「デュアルーイオンエネルギー分析器」も搭載されている。
JAXA、東京大学、名古屋大学などの国際研究チームは、これらの観測器のデータを解析し、水素イオンから電磁波へとエネルギーを渡していることを特徴付ける運動を観測。一方ヘリウムイオンでは、電磁波からエネルギーを受け取っている特徴的な運動をしていることを観測した。今回の現象を検出できたのは、従来の観測装置よりも20倍もの高いセンサーで観測出来たからだ。
この研究成果はアメリカの科学誌「Science」に掲載された。
JAXAが2016年に打ち上げた地球磁気圏探査衛星「あらせ」も、地球磁気圏を継続観測している。本研究で用いた研究手法が、今後の「あらせ」のデータ解析にも応用されることが期待されている。
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