【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆日本が先か、欧州が先か◆

2018年9月2日 09:50

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記事提供元:フィスコ


*09:50JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆日本が先か、欧州が先か◆
〇米株高に追随する力を問う〇
連日の米株高(4連騰、NYダウは7ヵ月ぶり高値、ナスダックとS&P500指数は最高値更新中)に対し、日欧の株価がもたついた動きとなっている。米国一極のままでは限界論が台頭しやすく、日欧が追随すれば世界同時株高の見方に変わることになる。

大雑把に測ると、日経平均は1月高値2万4124円に対し、昨日終値2万2848円は5.3%下に位置する。同様に、1月高値のドイツは7.4%下回る。5月高値のフランスは2.5%で最も高く、同じ5月高値の英3.98%が続く。足元好調のイタリアは15.4%で政変によるEU対立が尾を引き、新興国相場寄りの位置づけと思われる。

欧州の最大の問題は、難航するブレグジット交渉。最近はあまりウォッチもしていないが、事実上の離脱交渉期限である10月を前に、強硬離脱(ハード・ブレグジット)か否かが問われる局面が続いているようだ。昨日はバルニエEU首席交渉官が「前例のない提案を英国に提案する用意がある」と述べ、英ポンド急騰、英国株安となった。23日に英政府が「合意なき離脱」準備書25件を公表、27日にはフィリップ仏首相がハードブレグジットに備えた緊急措置の準備を閣僚に指示したと伝わっていただけに、柔軟な姿勢を好感した格好。一般的には、期限を12月に延期して延々と交渉が続くとの見方が有力。

ロンドンシティーは条件がどうなろうと、金融サービスの門戸を開き続け、世界的金融セクターの地位を守ろうとすると見られている。
7月に英国が「相互承認主義」(EUが規制すれば英国も制限する)を主張した時に一時動揺が走ったようだが、シティ最大の特色である「第三国」への門戸開放(EU以外の国にホールセール業務を認める。子会社形式で高コストの資本バッファーを積む必要がない)方式を維持すると見られている。

EUは域内の投資家が抱える1.5兆ユーロの資産運用でシティの専門性は外せないと見られる(代替候補は小規模、投資家は分散化を嫌う)が、シティの稼ぎの43%はEUからの稼ぎとの見方がある。米BAML(バンカメ・メリル)によると、ハードの場合、世界の中央銀行は外貨準備保有の1000億ポンドを売却する可能性があるとの試算を発表した。短期間に移動する事態になれば混乱は避けられないので、市場は合意なき場合でも臨時的な緩和策を注視することになろう。

他にも「メルケルの失敗」(外交の中心に据えてきたロシア、トルコ、中国で米国と対立、問題山積)、米EU通商交渉への懐疑的見方が7割(在独米商工会議所調査)に達するなど、重荷感がある。

本日、8月第4週の投資主体別売買動向が発表される。第3週は海外投資家が現物3449億円、先物3518億円、合計6968億円の売り越し。
東証に占める海外勢の売買割合は7割、うち3/4は欧州からの売買(月間単位で発表される地域別統計)。政治や経済は米国一辺倒だが、投資マインドは欧州のマインドが投影されがちだ。日本株が米株高に追随し切れないもう一つの側面と言えよう。


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/8/30号)《CS》

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