モヤシの細胞内には精巧な「ジャングルジム」がある、東大などの研究

2018年8月5日 20:02

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エチオプラストの膜構造。(画像:東京大学発表資料より)

エチオプラストの膜構造。(画像:東京大学発表資料より)[写真拡大]

 暗所で発芽させることで作られるモヤシは、細胞内小器官に「ジャングルジムのような」複雑な膜構造を作る。それが植物特有の糖脂質であるDGDGの働きによって出来上がるものであることを、東京大学と大阪府立大学の研究グループが明らかにした。

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 被子植物の種子を、暗い所で発芽させると、茎が細長く黄色い子葉を持つモヤシができあがる。モヤシの子葉にはエチオプラストと呼ばれる葉緑体の前駆体があって、モヤシが光を浴びると、エチオプラストは葉緑体に文化して、すぐに光合成を始められるようになっている。

 さて、このエチオプラストなのだが、電子顕微鏡で観察すると、その内部にジャングルジムのような格子状の構造を見てとることができる。この構造をプロラメラボディという。中にはクロロフィルの合成中間体プロトクロロフィリドを多量に含んでいる。

 このプロトクロロフィリドが、光受容に際してすみやかにクロロフィルに変換され、プロラメラボディは光合成の場であるチラコイド膜に姿を変える。つまり、植物の初期生育において、プロラメラボディの形成は非常に重要な役割を持っているというわけだ。

 さて、プロラメラボディはどのようにできるのか。従来の研究から、脂質二重層でできた筒状の膜構造が複雑に繋がり合ってジャングルジム構造を形成していることは明らかになっていた。これらの糖脂質は植物にほぼ特有のもので、ガラクトースを一分子結合しMGDG(モノガラクトシルジアシルグリセロール)と、二分子結合したDGDG(ジガラクトシルジアシルグリセロール)がそれぞれ50%、30%ほどを占めている。

 今回の研究では、DGDGの役割を明らかにするために、モデル植物のシロイヌナズナを用いて、DGDGの合成能力を失った変異体を利用した。すると、プロラメラボディの格子構造は非常に歪んだ形状になっていた。つまり、DGDGはプロラメラボディの規則的構造の形成に重要な役割を果たしていたと考えられるのである。

 なお、研究の詳細は、Plant Physiologyに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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