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物価の番人:日銀は「実態」を凝視すべき
日銀が「インターネット通販(以下、ネット通販)の普及拡大が国内の物価上昇を抑制している」との報告書をまとめた。調査統計局のレポートを要約すると以下の様になる。
【こちらも】日銀、ネット通販が物価下落に繋がっている可能性指摘
◆家計に占めるインターネット購買比率は近年、顕著に上昇している。支出額を品目別にみると、最近は日用品や衣類などの増加が目立つ。前年比1-3割増の勢いで伸びている。
◆宅配便業者の繁忙度が高まっているということも、ネット通販拡大を裏付ける現象といえる。
◆こうしたネット通販拡大の背景には、共働き世帯の増加が指摘できる。実店舗に出向くことなく24時間いつでも買い物ができるというネット通販の利便性を評価する消費者が増加していることがあると考えられる。
◆また場合によっては同じ商品を実店舗より割安に購入できるということも、ネット通販への消費者のシフトに繋がっているものとみられる。
◆2017年の家計消費に占めるネット通販比率をもとにした試算では、生鮮食品・エネルギーを除くコア物価上昇率で0.1~0.2%分の押し下げ効果が認められる。
メディアは「日銀がネット通販の現状・物価への影響を詳しく分析したのは初めて」と伝えているがこの程度の「日銀レビュー」ならふんだんに官公庁の資料・データを駆使できるわけだから、失礼ながら私にも書ける。例えば確かにネット通販の普及が、実店舗買いに比べて割安な取得を実現していることは欧米諸国と比べても顕著だ。業者によるネット通販の普及・拡大⇔競争激化⇔在庫・流通体制の整備の企業努力の結果である。そのどこがいかんというのか。
そして抱かざるをえない疑問は、日銀は何故このタイミングでレポートを発表したかである。ある大手新聞の日銀担当の記者は「4月のコア物価上昇率が0・4%にとどまり、前の月に比べ0.1ポイント縮小したのが契機」とした上で、こう言い及んだ。「今回の調査結果は7月の金融政策決定会合で報告される。同時に公表されるいわゆる展望レポートで、18年度以降の物価見通しを下方修正する論拠とされる公算が高い」。
FRB・ECBに比べ(金融緩和の)出口論のタイミングで大きく水をあけられている日銀の「その場逃れの場当たり的な一策」としたら、「愚」としか言葉が浮かばない。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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