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スプリントとTモバイルUSが経営統合に合意 ソフトバンクは主導権を失う
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ソフトバンクグループの傘下で米携帯電話4位のスプリントと、同3位のTモバイルUSとの経営統合交渉が、Tモバイル親会社の独ドイツテレコムとの間で大筋合意した。統合会社の順位は3位のまま変わらないが、契約者数は1位のベライゾンが1億4600万人超、2位のAT&Tが1億3400万人であるのに対して、新会社は1億3100万人超となり、対等な勝負が可能な拮抗した状況となる。TモバイルのレジャーCEOは相当浮かれ気味に、経営統合の効果を強調し、ベライゾンやAT&Tを強くけん制した。(契約者数は17年3月末現在・スプリントとTモバイルを合算し新会社契約者数とした)。
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昨年7月に孫正義社長は、”スプリントの業績が順調であること”、”経費の削減が進捗していること”、”収益が改善して単独での経営に自信を深めていること”等を強調した上で、さらなる価値向上策として複数の選択肢を検討中であることを記者会見で表明していた。
その流れを受けて、10月にはTモバイルとの経営統合が大筋で合意したと一旦伝えられたが、下旬になってソフトバンクはスプリントとTモバイルUSとの経営統合の中止を決めた。その際の統合案では、Tモバイルの親会社であるドイツテレコムが、株式の過半を握り、新会社はソフトバンクの関連会社になるとしていた。時価総額ではスプリントが見劣りするため、ソフトバンクが統合会社での経営の主導権を発揮できないと懸念した取締役会の判断によって、統合を見送ったと伝えられている。
今回の合意では、Tモバイルの親会社であるドイツテレコムが統合会社の経営権を握り、ソフトバンクは持ち分法適用会社となって連結対象から外れる。前回の大筋合意との違いは見えにくい。経営権を失う代わりに連結対象から外れることで、ソフトバンクの懸案である財務改善が進む。新会社がスプリントを上回る収益力を持つことが見込まれ、27.4%の出資比率となるソフトバンクが持分法投資損益を計上することで収益力も強化される。但し、前回も同様に期待されていたことだ。
11月の決算説明会で「米国は世界最大の市場で、通信インフラを手放すわけにはいかない」と孫正義社長が語ったこととの整合性が見えにくい。20年の5Gの商用化が目の前で、携帯各社の投資競争は熾烈さを増す。10兆円ファンドを運用することの面白味を経験して、米携帯市場への思い入れが薄れたのか?孫正義社長にして、思い通りにならないことがあることを、目の当たりにした。
もっとも、米連邦通信委員会(FCC)の認可を得られる見通しは立っていない。どんな決着を見るのか?その日を迎えるまで、先は見えない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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