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子供たちの疲労回復力はアストリートに勝る フランスの研究
●子供たちはなぜ疲れ知らずなのか、という素朴な疑問
早朝から体を動かしているのに午後になっても疲れを知らない子供たち。その体力についていけない親たちは、なぜ子供たちはこれだけ運動をしているのに疲れないのかと疑問に思うことが多々ある。
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その疑問を、生理学の分野から研究し『Frontiers in Neuroscience』に発表したのは、フランス・オーベルニュ大学のセバスチャン・ラテル教授と、オーストラリア・エディスコーワン大学のアンソニー・J・ブレイズビック教授である。教授たちによると、子供たちが持つ疲労からの驚異の回復力に関する秘密は、筋肉にあった。その能力は、鍛え抜かれたアストリートにも勝るという。
●過去に行われた「運動する習慣のない大人」との比較
日々のさまざまな活動の中で、子供は大人に比べると心血管系の能力が限られていることや、非効率的な運動パターンを繰り返すなどの理由から、子供の体力は大人のそれに劣るといわれてきた。しかしラテル教授は過去に、子供たちの疲労に対する筋力の耐性や高強度運動からの迅速な回復力について研究を発表し、これに反論してきた。つまり、教授の研究では、子供たちは運動する習慣のない大人と比べると疲労度が低いことが明らかになっていたのである。
●子供と大人のアストリートとの比較
そこで、ラテル教授とブレイズビック教授は、今回はアストリートと呼べる運動能力を持つ大人と、子供たちの体力を比較したのである。この研究のために、両教授は3つのグループを比較した。
8才から12才の子供たちのグループ、運動をする習慣のない大人だけのグループ、もう一つはトライアスロンの選手たちのグループである。この3つのグループに、いくつかのサイクリングテストを実施した。
●子供たちの活発な好気性代謝
研究グループは、参加者たちの心拍数、血中酸素濃度、乳酸除去の確率などを観察した。乳酸は、筋肉内に蓄積すると疲労を引き起こす原因となる。
そして、子供たちの多くは好気性代謝が非常に活発であるため、激しい運動をしても疲労しにくいことが判明した。さらに、子供たちの回復心拍数や乳酸除去率は、アストリートのそれよりも高かった。つまり、8才から12才の子供たちの疲労からの回復力は、アストリートよりも優れていることが判明したのである。
●研究結果は成人病予防にも役立つ
今回の研究結果は、子供たちの運動能力を促進させるために役立つだけではない。運動量が減る成長過程で、生理学的変化がさまざまな疾患のリスクとどのような関連があるのか理解をする上でも有益といわれている。
また、8才から12才の子供たちはすでに非常に優れた疲労耐性を筋肉内に有しているため、運動能力を伸ばしたいという理由で高レベルの技術を習得するには適齢であるとラテル教授は語っている。
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