ウイルスから作られた熱電導フィルム、東京工業大学が開発

2018年4月9日 07:01

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規則的に集合化したM13ファージの上面と側面の模式図。(画像: 東京工業大学の発表資料より)

規則的に集合化したM13ファージの上面と側面の模式図。(画像: 東京工業大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京工業大学の物質理工学院 応用化学系の澤田敏樹助教、芹澤武教授、村田裕太大学院生(開発当時)らは、同学院 材料系の森川淳子教授、応用化学系の丸林弘典助教、野島修一教授との共同で、無毒な繊維状のウイルスを集合化させてフィルムとして構築し、これが熱伝導材フィルムとして利用可能であることを発見した。

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 本研究は、科学技術振興機構(JST)の研究支援のもとで行われた。

 近年、電気製品や電子機器の小型化を受け、優れた熱伝導材料の開発が求められている。電気を絶縁し、柔らかく、火口に優れるマテリアルが好ましいため、有機高分子材料が有用であると目されているのだが、金属やセラミックスなどに比べると熱伝導性が2~3桁も低いというのが問題であった。そこで、何らかの方法で、有機系高分子材料の熱輸送効率を簡便に向上する原理や方法が求められていたのである。

 研究グループが注目したのは、「生体が本来的に持っている階層的な集合構造」であった。「M13ファージ」というウイルスは、無毒で、ひも状の構造を持つ「繊維状ウイルス」の一種である。このM13ファージを効率よく集合化させ、規則的で緻密な集合構造を形成すれば、効率の良い熱輸送が可能なマテリアルが作れるのではないかと考えられた。

 一方、よく知られている一般的な現象として、コーヒーリング効果というものがある。こぼれたコーヒーの水滴が蒸発するとき、水滴の端の部分が早く蒸発するので、コーヒー粒が水的な端に集まるという現象の事だ。M13ファージの水溶液を乾燥させる際に、このコーヒーリング効果を応用したところ、ほかに特別な処理を施さなくても、ガラスに匹敵する熱伝統率を持つフィルムが開発できたのである。

 なお、研究の詳細は、Scientific Reportsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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