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100年前にワイヤレス送電を開発!不遇の天才、ニコラ・ステラ【スマホでサンマが焼ける日】
【第8回】電気・エネルギー業界は今、50年に1度の大転換期を迎えています。電力自由化をきっかけに各家庭へのスマートメーター導入が開始され、電力産業、電力関連ビジネスは一気にデジタル化の道を歩み始めました。本連載では、RAUL株式会社代表取締役の江田健二氏が、IoTとも密接な関係を持つ電力とエネルギーの未来を、ワイヤレス給電、EV(電気自動車)、ドローン、ビッグデータ、蓄電池、エネルギーハーベスティング、VPPといった最新テクノロジーの話題とからめながら解説します。
本連載は、書籍『スマホでサンマが焼ける日』(2017年1月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。
無線技術の先駆者、ニコラ・テスラ
みなさん「電気を電波のように無線で飛ばす」と言うと、少しびっくりするかもしれませんが、考えてもみてください。
雷の電気は空中で発生して空中を飛んでいます。また、静電気も空中を飛んでいるわけですし、みなさんが子供の頃理科の実験で目にした電磁石でも、空間を電気が移動しています。
そもそも電気は線(ワイヤー)がなくても空中を移動できるものなのです。
こうした電気の特性を利用して、電気を線(ワイヤー)なしで送ったり受け取ったりできる「無線送電」の仕組みを、なんと100年以上前に研究開発し、実際にシステムを作り上げた研究者がいます。
彼の名はニコラ・テスラ。旧ユーゴスラビア出身でアメリカに渡ってエジソンの元で研究活動をした、無線技術の先駆者と呼ばれる発明家です。ニコラ・テスラは無線、ラジオ、無線操縦、放電照明、現在我々が使っている冷蔵庫やエアコン、洗濯機などに使われている交流モーターの技術や原理を発明しました。
日本ではテスラの名はあまり知られていませんが、アメリカではエジソンやアインシュタインなどと並び誰もが知っている天才科学者です。
テスラは数多くの人類史に残る重要な発明を成し遂げたにもかかわらず、生前はその業績が正当に評価されることなく生涯を終えた「不遇の天才」と呼ばれるサイエンティストでしたが、近年になって改めて再評価されはじめています。
ちなみにイーロン・マスク率いるテスラモーターズの社名は、彼の名前からとっていることは有名な話です。そんなテスラが、無線による電力の伝送「無線送電」の研究・実験に取り組み始めたのは、今から100年以上前の1890年代後半のことでした。
テスラは「電気エネルギーを無線で送受信できれば、送電線を使った送電コストを大幅に削減でき、世界中に電気が送れる」と考え、この研究を始めたのです。
テスラは何度も実験と失敗を繰りかえし、無線送電システムを作り上げていきましたが、様々な事情により挫折。結局、無線による送電の実用化は実現しませんでした。
via www.amazon.co.jp
スマホでサンマが焼ける日 電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」
¥1,375
この連載では書籍からごく一部のキーワード解説を掲載しています。
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ワイヤレス給電の需要が技術を進歩させる
それから今日までの約100年間、人類は電気を電線(ケーブル)で送受信する「ワイヤー送電(給電)」で電気のやりとりを行ってきました。
この100年間、ワイヤレス給電の実用化をめざした研究も開発もほとんど進められてこなかったのは、やはりそこにニーズがなかったのだと思います。
「別に有線でいいのでは。そのほうが安全だし、わざわざワイヤレスで飛ばす必要はない」という考えです。
また、昔は電化製品の数自体が少なかったので、先ほど話したような有線による不便さというものも感じなかったのだと思います。
しかし今、ようやく人々がワイヤレス給電を切に求める時代になり、100年前にテスラが失意のうちに断念したワイヤレス給電に、改めて大きな注目が集まっているのです。
やはりテクノロジーの発達、普及はニーズありきですから、これからは、電線を使って電気を運ぶこと自体がちょっと非効率だよね、不便だよね、という時代になっていき、ワイヤレス給電が急速に普及していくでしょう。
書籍著者:江田 健二さん
「環境・エネルギーに関する情報を客観的にわかりやすく広くつたえること」「デジタルテクノロジーと環境・エネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること」を目的に執筆/講演活動などを実施。富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。その後起業、環境・エネルギービジネスの推進や企業のCSR活動を支援している。RAUL株式会社 代表取締役、一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人エコマート運営委員。 元のページを表示 ≫
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