【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(4):◆ドル円108円の攻防◆

2018年1月28日 10:15

印刷

記事提供元:フィスコ


*10:15JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(4):◆ドル円108円の攻防◆
〇通商問題でのドル安思惑、円高加速〇

ムニューシン米財務長官が「弱いドルは米国にとって良い事」と ダボス会議で発言し、ドル売りが加速している。NY時間でドル円 は一時108.97円、4ヵ月ぶりの水準、ユーロ/ドルは1.2415ドルと 3年1ヵ月ぶりの水準。英ポンドは16年6月のブレグジット以来の水 準となる1.42ドル台。昨年10月頃、ユーロ高で始まったドル安が、 全面安状況となって来た。
トランプ大統領の「米国第一」姿勢で通商問題は目立った成果を挙 げて来なかったが、前日の洗濯機と太陽光パネルにセーフガード発 動などで、貿易赤字是正に取り組み始めたとの見方が背景にある。 通商規制とドル安の相乗効果で成果が出易くなる。

ドル円は17年9月107.83円、4月108.4円と108円近辺で円高ゾーンを 形成しているため、まずは108円の攻防が焦点になる(正しくはオプ ション権利行使価格のある107.5円)。この水準であれば、110~115 円ゾーンに戻るとの見方で、企業業績への懸念は限定的となろう。 その下は16年8月の100.2円。心理的には105円もフシ目と思われるが、 当時はブレグジットの余波で止まらなかった。16日時点のIMM通貨先 物建玉は11万9350枚の売り越しで、これが一気に解消されるイメージ になる。110円台を回復したのは11月で、3カ月程度は我慢の局面か。

1990年代以降「強いドルは国益」(当時のルービン財務長官)だった。 これは、プラザ合意以降の大幅ドル安で、米国債消化で海外資金を呼び 込むことに不安があったためだ。財政事情は日本より米国の方が悪く、 4割強程度は海外資金に依存している。 端的に言えば、ドル金利が上昇してくれば歯止めになる。昨日の米10年 物国債利回りは2.65%台。2.7~2.8%台に跳ね上がる公算はある。既に ドル安を投影して原油相場が上昇、WTIは66ドル台/バレルを付けた。

来週にも米財務省は四半期の国債発行計画を発表する。観測では、前年 の倍以上の1兆ドル超、2010年以来の大きさになると見込まれている。 JPモルガンの予想は1兆4200億ドル前後(昨年は約5500億ドル)。10年 債利回りは年末までに2.9%に達する予想。障害があっても、金利差が大 幅に拡大すれば、投資魅力を増そう。

昨日、貿易統計速報で17年輸出額は前年比11.8%増の78兆2897億円。ア ジア向けが15.7%増の42兆9252億円、中国向けは20.5%増の14兆8914億 円と共に過去最大。台湾TSMC董事長の発言として5年ぶり水準にある 台湾ドル高に警戒コメントがあるなど、通貨高はアジアに広がる。米国 向け輸出が現実に停滞することになれば影響は広がるが、当面はアジア 貿易の活況度が下支えになる公算があろう。

以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/1/25号)《CS》

関連記事