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価格の優等生だった砂糖 世界の需要増加に生産は追いつくか
農林水産省の発表によると、日本を始めとした先進諸国における砂糖の消費量は減少傾向にあるものの、中国やタイ、韓国などを中心として世界的な砂糖の需要は増え続けていることが分かった。
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■景気と砂糖消費の関係は?
25日、農林水産省は「砂糖及び異性化糖の需給見通しについて」発表した。これは、関係者(生産者、製造業者、実需者)への参考となるように、適切な価格の維持を目的として四半期毎に発表しているもの。
2017年の砂糖年度(10月1日から翌年9月30日までの期間)及び同年度1~3月期の見通しは、分蜜糖(上白糖、グラニュー糖など)が190万トン(対前年+0.3%)、含蜜糖(黒糖など)が3万7,000トン(対前年+3.0%)、異性化糖(ぶどう糖と果糖の混合液糖で主に清涼飲料に使用)が81万5,000トン(対前年-2.0%)と、ほぼ横ばい。
この根拠として、含蜜糖は「近年の消費動向等を勘案し」、異性化糖では「近年の消費動向等を踏まえ」とあるだけだが、分蜜糖は「近年の消費動向を基に、景気は緩やかな回復基調が続いていることを等を踏まえ」とある。景気が良くなると砂糖の消費が増えるようだ。
■日本の長期的な砂糖消費は減少に
ただし長期的には日本における糖類の消費は減少している。
1975年に287万7,000トンだった日本の砂糖の総需要量は、1993年に247万6,000トン、2014年には197万1000トンにまで減少した。
国内の生産量は、平成の初めに900万トンを超えたこともあったが、近年は700万~800万トンに落ち着いている。その分、輸入量が大きく減った格好で、1975年の235万1000トンから、2016年には111万8000トンと半分以下となった。
■日本人1人当たりの年間消費量は16.6キロ
資料には、日本を始めとして欧米やアジアの国の砂糖消費量の変化を掲載している。2016年の日本人1人当たりの1年間の砂糖消費量は16.6キロ。WHO(世界保健機関)のガイドラインによると、成人が摂取して良い砂糖は1日25グラム(年間約9キロ)なので、まだ多すぎることになる。ただし1970年頃には30キロを超えていたことを考えれば、良い方向に向かっているのは間違いない。
国や地域別で最も多いのがオーストラリアの45.3キロ。次いでタイ(44.4キロ)、EU(36.9キロ)、カナダ(33.0キロ)、アメリカ(31.8キロ)、韓国(30.5キロ)、日本(16.6キロ)、中国(11.4キロ)の順。
ただしオーストラリアや欧米が減少もしくは横ばい傾向にあるのに対して、タイ、韓国、中国は増加している。1960年頃、タイや韓国の1人当たり砂糖消費量は5キロ程度だったのが、1990年頃に日本を超えて、欧米並みの消費量となった。中国もタイや韓国ほどではないものの、右肩上がりの増加を続けている。
■生産と輸出のトップはブラジル
アジア地域だけが原因ではないだろうが、世界の砂糖の消費量は増加中で、それを埋めるように生産量も増え続けている。そこで気になるのが砂糖の生産量や輸出入量だ。
砂糖の国別需給予想を見ると、生産量と輸出量の1位はブラジルで、約3,952万トンを生産し、約2,676万トンを輸出している。生産量の2位以下は、インド(約2,720万トン)、タイ(約1,200万トン)、中国(約1,120万トン)、パキスタン(約840万トン)と続く。輸出量の2位以下は、タイ(約793万トン)、オーストリア(約371万トン)、フランス(約320万トン)、グアテマラ(約206万トン)だ。
■砂糖が足りなくなる日が来る?
一方、輸入量のトップは中国で約600万トン。輸出はランクインしていない(10位のインドが約110万トン)ため、生産量の約1,120万トンと輸入量の約600万トンを合わせた量が中国国内の消費量となりそうだ。
もし中国の1人当たりの砂糖消費量(11.4キロ)が、欧米やタイ、韓国並みに3~4倍に増えた場合、国内生産を増やせなければ、輸入を増やす以外にないだろう。単純計算では、インドの生産量(約2,720万トン)か、ブラジルの輸出量(約2676万トン)くらいが必要になる。
自動車燃料となるエタノールの需給動向などにより、砂糖の国際相場は随分と上下しているが、日本国内では関係者の努力もあってか、小売価格は安定してきた。しかしこれがどこまで続くか、見通しは不明だ。(記事:県田勢・記事一覧を見る)
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