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■トランプ大統領の「トランプ・ファースト」「アメリカ・ファースト」
その昔の日本の「不動産バブル」時代のことだ。日本企業は、不動産バブルをアメリカに“輸出”した。
日本の不動産会社、あるいは不動産以外の会社も、アメリカの有名ビルなどを買いまくったものである。ハワイのコンドミニアムなどもそうだったが、あっという間に日本勢がアメリカの有名物件を買い占めていった。
ニューヨークでは、ロックフェラーセンタービル、ティファニービルなどが、軒並みに日本企業が所有者に変わった。プラザホテルのオペレーション企業も日本の建設会社が買い取り、ニューヨークに時ならぬ不動産ブームが巻き起こった。
当時、“ニューヨークの不動産王”といわれていたドナルド・トランプ氏は、「日本はよいことを教えてくれた。アメリカ人は、不動産の価値を利回りでしか判断しない。日本は含みで不動産の価値を計る」と。
利回りではなく、いずれ不動産の価値は上がると「含み」で判断してくれれば、ディール(取り引き)の価格は上がる。利回りでは値段は上がらない。しかし、「含み」なら高値で取引ということになる。
トランプ氏には持ってこいの話だった。トランプ氏は、当時から「トランプ・ファースト」だったし、いま大統領として主張する「アメリカ・ファースト」もずっと以前から身についたものである。自分に有利ならその現実を受け入れる――。
■日本のメディアも「ジャパン・ファースト」
日本のメディアを見ていても、これもそうクリアには主張はしていないが、「ジャパン・ファースト」である。
――トランプ大統領が、自分の支持率回復のために北朝鮮と戦端をひらいて、その結果、日本が戦争に巻き込まれる。アメリカの勝手のために日本が被害をこうむるのはごめんだ――。テレビのワイドショーなどで、そうした発言が繰り返されている。
日本のテレビメディアでは、日本はトランプ大統領の被害者で、北朝鮮の核とミサイルを容認するしかないといった論調になっている面がある。「ジャパン・ファースト」からの論調なのだろうが、被害者意識が強調され、自国=日本の問題ではないのにというスタンスになりかねない。
*****もっとも朝のワイドショーでは、「ジャパン・ファースト」どころか、放送中にほとんど脈絡なしに「ジョンマスターのリップクリームがよい」(テレ朝)という発言が連呼されたりしている。成分表示で不正があったばかりのブランドを一方的に肯定したのである。これは意図的な“放送事故”か、ジョンマスターの手の込んだ広告なのか・・・。他者を論じるばかりのメディアとしては、程度が低すぎる感がある。
■相撲界ならカラオケのリモコンで済むが
そうこうしているうちに、北朝鮮は「核とミサイル」を持とうとしている。日本・アメリカ・韓国、それに中国がそれぞれ“自国ファースト”で動いているのだから、これは北朝鮮からしたら、下手をすれば包囲網は隙だらけということになりかねない。
もっともアメリカは北朝鮮と事を構えた場合、仮に北朝鮮に進入してもそれは短期的であり、駐留を継続しないということで中国と話がついているとしている。 中国は、アメリカの北朝鮮への“仕置き”を黙認するが、北朝鮮という緩衝地域は確保するというスタンスである模様。
これは中国の「中国ファースト」だが、北朝鮮としては東西からジワリと包囲されているようなものだ。相当な圧力になることは間違いない。
北朝鮮というファクターがどうなるのか。アメリカと中国の利害や思惑が一致して、北朝鮮の「核とミサイル」問題が解決すればよいのだが・・・。新年を大きく左右するのは、このファクターにほかならない。 相撲界ならカラオケのリモコンで済むが、こればかりはそういうわけにもいかない。
(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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