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11月の倒産件数は1990年以来の低水準に 負債総額は今年3番目の多さに
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東京商工リサーチの発表によると、今年11月の倒産件数が引き続き減少傾向にあることが分かった。ただし為替やチャイナリスクを原因とした倒産が減っている一方、人手不足を原因として倒産が高い水準にあることも判明した。
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■都道府県別の集計では危うさも
8日、東京商工リサーチが2017年11月の企業の倒産状況を発表した。これによると、倒産件数は667件(前年同月比-16件)で、11月としては、1990(平成2)年の663件以来となる倒産件数の少なさ。ただし都道府県別の集計では、前年同月比で倒産件数の増えた県(24県)が減った県(21県)を上回った。この状況が3カ月連続となるのはリーマン・ショック以来となるため、「全国的な倒産減少の『底打ち』をうかがわせた」と危うい状況を伺わせる部分もある。
■今年3番目に多かった負債総額
負債総額は約1,456億円(前年同月比-4488億円)。昨年から大きく減少したのは、昨年11月にパナソニックプラズマディスプレイ(負債額:約5,000億円)の倒産があったため。負債額が1億円未満の企業が倒産件数の7割以上となったことから、これまでと同様に「小規模企業倒産を中心に推移した」としている。
ただし、消費者金融のネットカードが倒産(負債額:約594億円)したため、9月と比較すると負債総額は約498億円の増加。これは、2017年では、タカタ(負債額:約1兆5,024億円)の倒産があった6月(月次負債総額:約1兆5,883億円)、てるみくらぶ(負債額:約151億円)やレイテックス(同:約114億円)が倒産した3月(月次負債総額:1,668億円)に次ぐ3番目の多さとなる。
■サービス業の倒産件数が増加傾向
産業別では、全体の動向と合わせて前年同月比で倒産件数が減っている産業が多い。製造業が6カ月連続、不動産業が4カ月連続で減少したほか、卸売業が3カ月ぶり、運輸業は4カ月ぶりに減少に転じた。
その一方で倒産件数が増加傾向にあるのがサービス業で、前年同月比で9カ月連続の増加となっている。
過去3年の推移では、月によってかなりの変動があるものの、製造業と小売業がやや減少、建設業と卸売業が横ばいに推移する中、サービス業のみ増加している様子が分かる。
■人手不足が原因による倒産件数は高水準
11月分の集計と同時に、「為替」関連倒産や「チャイナリスク」関連倒産についても分析・発表しており、それぞれ沈静化傾向にあるとのこと。しかし危うい状況を示唆しているのが「人手不足」関連倒産だ。
11月の人手不足などが原因の倒産件数は25件。これは前年同月比-4件で、2カ月ぶりに前年同月を下回った。倒産原因内訳では、企業代表の死亡や引退があったものの後継者のいない形の倒産(資料表現では「後継者難」型、以下同じ)が22件と最も多い。
その他、求人をしても従業員が確保できない倒産(「求人難」型)、従業員の退職により事業継続が困難となった倒産(「従業員退職」型)、賃金等の高騰により事業継続が困難となった倒産(「人件費高騰」型)が、それぞれ1件発生している。
今年11月までの累計件数は294件で、前年同時期の299件から微減。しかし先に取り上げたように、全体の倒産件数が減少傾向にある中、人手不足関連の倒産があまり減っていないのは、従業員の充足が厳しい状況を伺わせる結果となった。(記事:県田勢・記事一覧を見る)
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